まさかの湊斗の提案に、私の心臓がドクンと大きく跳ねた。
彼の顔は普段と変わらないけれど、私を気遣う優しい気持ちが伝わってくる。
「え、でも、サッカー部の練習は……? 湊斗、無理しなくていいよ?」
私が戸惑いながら尋ねると、彼は腕を軽く回しながら答える。
「練習は、もう終わった。これは自主練のつもりだから。それに、一人で走るより、誰かと一緒のほうが集中できる」
湊斗の言葉に、私はホッと胸を撫で下ろす。
湊斗に無理をさせてしまうのは嫌だけど、彼が「自主練のつもり」だと言ってくれるなら……。
それに、『誰かと一緒のほうが集中できる』なんて、なんだか私が湊斗に必要とされているみたいで、すごく嬉しい。
「うん! ありがとう、湊斗」
私は、彼の言葉に甘えるように、小さくうなずいた。
その日から、サッカー部の練習が早く終わった日や部活が休みの日には、湊斗が私の走る練習に付き合ってくれるようになった。
最初は緊張で全身がこわばってしまい、いつも以上に息が上がってしまったけれど、湊斗が隣で走ってくれると、不思議と心が落ち着いていくのを感じた。
彼の規則正しい足音が、私の乱れた呼吸を整えてくれるようだった。
私が息を切らしそうになると、湊斗は必ず「ペースを考えろ」と言って、私の走る速さに合わせてくれる。
他にも湊斗は、私に色々なアドバイスをしてくれた。
「しずく、目線は真っ直ぐ。地面を見るな」
「腕はしっかり振れ。でないと、リズムが崩れる」
「呼吸は吐くほうを長くするんだ」
まるで私に寄り添うように、彼はいつもそばにいてくれた。
湊斗のさりげない優しさに、私の心臓は終始ドキドキしっぱなしだ。
彼の横顔を盗み見ると、真剣な眼差しで前を見据えていて。きりっとした表情に、私はさらに胸が高鳴った。



