最強パティシエは、幼なじみに恋をする



実は私の怪力は、手だけでなく足にもある。


ぐっと踏み込んだ足元から、小さく砂ぼこりが舞い上がったかと思うと、土に埋もれていた小さな石が、カキーンッと乾いた音を立てて砕け散った。


直径3センチほどの石だったのに、まるで踏み潰されたビスケットみたいだ。


手のひらほどの大きさのヒビが、地面に薄く刻まれていた。


「ひぃっ!」


思わず、情けない声が漏れる。周りに人がいないことをもう一度確認して、ホッと胸を撫で下ろす。


こんなところを、もし誰かに見られていたら……。


重たいものを持ち上げるときは細心の注意を払っているけれど、走っているときの無意識の力までコントロールできないなんて、やっぱり秘密を隠し通すのは難しい。


誰かに見られていたらと想像するだけで、ゾクッと背筋が冷たくなった。


誰にもバレないようにと、怪力というこの秘密を必死に隠しながら、それでも私は諦めずに走り続ける。


夕日がグラウンドの隅からゆっくりと沈み、空の色がオレンジから深い藍色へと変わっていった。