最強パティシエは、幼なじみに恋をする



その日の放課後。


私は誰にも気づかれないように、グラウンドの隅で走る練習を始めた。


まだ部活動の生徒たちが残っている時間は避けて、日が傾き始め、ほとんど人がいなくなった頃を見計らって広いグラウンドに出る。


ひんやりとした風が、頬をふわりと撫でていく。


乾いた土のグラウンドを踏みしめるたび、フワリと砂ぼこりが舞い上がった。


周りに誰もいないことを確認して、私は大きく息を吸い込む。


よしっ、頑張ろう!


そう心の中でつぶやくと、私は地面を強く蹴って走り出す。


最初こそ軽やかに進むものの、すぐに息が上がり始める。


腕をしっかり振って、地面をリズミカルに蹴ろうとするけれど、思うように体が動かない。


まるで体が鉛みたいに重たくて、前に進ませるのがやっとだった。


最初のうちは、ぎこちないフォームで、足がもつれては何度も転びそうになる。


慌てて体勢を立て直そうと、ぐらりと傾いた足にぐっと力を入れた、その瞬間だった。


──ゴッ!