「七海、早く資料集を……!」
「あっ、うん!」
私の声に我に返った七海は、素早く本に手を伸ばし、スポンッと勢いよく引き抜いた。
本が抜けたのを確認した私は、そっと力を抜く。書棚は、元の位置に静かに戻った。
これだけ重たい書棚を持ち上げても、私の体からは汗一つ出ていない。
「しずく……」
すぐそばから、七海の声が聞こえる。
七海を助けたくて、つい力を使ってしまったけれど。私の怪力を目の当たりにして、七海はどう思っただろう。
『やだ、しずくちゃん、怪物みたい……』
幼いあの頃みたいに、また友達を失うことになったらって思うと、怖いけど……。
「本、取れて良かったね、七海」
私は敢えて、なんてことのないように、七海に向かってにっこりと微笑んでみせた。
だけど、七海の顔を見るのが怖くて、私はすぐにうつむいてしまう。
「……」
七海は先ほどから何も言わず、その場には長い沈黙が続く。
やっぱり、嫌われちゃったかな?



