私の怪力は、誰にも知られたくない秘密だ。
もし、ここで力を使ってしまったら、また幼いあの日のように『怪物みたい』って言われてしまうかもしれない。
あのときの友達の言葉が、耳の奥でこだまするような気がして、全身が凍りつくようにひゅっと冷たくなった。
だけど今、すぐ目の前には、なすすべもなく困っている七海がいる。
彼女はいつも笑顔で、私を支えてくれる大切な親友。だから、やっぱりこのまま放っておくなんてできない。
私は、七海のことを助けたい──!
恐怖よりも、親友を助けたいという気持ちが、私の心の中で大きく膨らんだ。
胸の奥に、じんわりと温かい力が湧き上がってくるのを感じる。この力が、今こそ七海の助けになるはずだ。
私はキョロキョロと、辺りを注意深く見回した。幸い、今は私たち以外誰もいない。
私は、七海の隣に立つと、体がちょうど書棚の陰になるように少しだけ身をかがめた。
誰にも気づかれないように、両手でそっと書棚の下のほうを支える。
手のひらに、冷たい木の感触が伝わってきた。
すうっと深呼吸して、少しずつ手に力を込める。足元にもグッと力を入れて、私は歯を食いしばった。
──ミシミシッ!
少しして、重い木製の書棚は、鈍い音を立てながらわずかに持ち上がった。
資料集が抜き取れるほどの隙間が、ゆっくりと、だけど確実に生まれていく。
「しずく……!?」
その様子に、七海は目を見張った。ぽかんと口を小さく開けて、私と書棚を交互に見ている。



