最強パティシエは、幼なじみに恋をする



「あっ」


手が滑ったのだろうか。書棚から抜き取った資料集が、七海の手からするりと落ちた。


ずっしりと重い資料集は床に激しく叩きつけられ、そのまま勢いよく、つるりと滑る。


細い通路を通り抜け、壁と書棚の間にできた、わずかな隙間にガツン! と鈍い音を響かせて深く入り込んでしまった。


「んんーっ」と、七海は焦れたように、届かない本に手を伸ばす。


七海が手を伸ばしても指先すら届かず、どうやっても取り出せないほど、隙間にぴっちりと挟まってしまったようだ。


「やだ、どうしよう……!」


七海は顔を真っ青にして、挟まってしまった資料集を引っ張る。だけど、本はびくともせず、まるで根が生えたかのように動かない。


「ううっ」


七海が唸りながら、今度は書棚を動かそうとするけれど、ずっしりと重くてまったく動きそうもない。


「これじゃあ、本を元の場所に戻せないよ……! 誰か呼んだほうが良いかな」


七海は、困り果てた表情で私を見た。その顔には、焦りと少しの諦めが浮かんでいる。


眉をハの字に下げ、唇をキュッと結ぶ七海。


「あらあら、どうしたの?」


書棚の前で立ち尽くしている七海に、司書の女性が声をかけてくれた。


七海が事情を話すと、先生は書棚を力いっぱい押してみるものの、ビクともしない。


その後も何人かの生徒や先生が通りかかり、書棚を動かしてみたものの、やはり結果は同じ。


誰もが諦めたように、書棚の前を通り過ぎていく。


「しずく、どうしよう……」


七海に見つめられ、私の心臓がドクドクと早鐘を打つ。