最強パティシエは、幼なじみに恋をする



数日後の放課後。私と七海は、学校の図書室で社会科の課題に取り組んでいた。


七海は、このところずっと、この課題に頭を悩ませているようだった。


木の香りが漂う静かな空間には、ページをめくる音や、鉛筆が紙を擦る音だけが小さく響いている。


私は集中して本を読んでいたけれど、ふと顔を上げると、七海が何やら考え込んでいるのが見えた。


借りてきた参考書を広げたまま、眉間にしわを寄せている。


「うーん。この部分、もっと詳しく書いてる本はないかな?」


七海が、少し困ったように書棚を見上げる。


彼女の視線を辿ると、その先にある書棚の一番上に、分厚い資料集がずらりと並んでいるのが見えた。


七海は、一度課題に熱中すると、周りが見えなくなるような集中力がある。


「あっ! あの資料集なら、もしかして……」


しばらく書棚を眺めていた七海は、目的の資料集を見つけたらしい。


近くにあった木製のイスを引っ張ってきて、その上に立った。キィ、と小さな音がする。


七海は背伸びをして、指先がやっと届くか届かないかという高さのところにある資料集に、一生懸命手を伸ばす。


腕を限界まで伸ばし、指先で辛うじて資料集の背表紙に触れた。


七海、頑張れ! あと少し、もう少しだよ……!


その光景を、私は祈るように見守っていた。