最強パティシエは、幼なじみに恋をする



文化祭も終わり、賑やかだった校舎には、いつもの静けさが戻ってきた。


朝のホームルームのざわめき、授業中のチャイムの音、放課後の部活動の活気ある声。


そんな穏やかな日常が、再び静かに流れ始めていた。


私が、自身の怪力と高速作業能力の秘密を隠しながら、「普通の女の子」として過ごす日々も、相変わらず続いている。


人前でうっかり力を出しすぎてしまわないよう、目立たないように振る舞おうと必死だった。


バレないように、まるで綱渡りをするような、そんな緊張感が常に私にはあった。


ある日の放課後。私は親友の七海と、学校の下駄箱で靴を履き替えていた。


「ねえ、しずく。今日は隣町の図書館に寄っていかない?」


七海が、ポニーテールを揺らしながら明るい声で尋ねてくる。彼女の笑顔は、いつだって私の心をパッと明るくしてくれる。


「そうだね。社会の課題で調べたいこともあるし、ちょっとだけ寄っていこうか」


私たちは他愛もない話をしながら、昇降口のドアを押し開けて外に出た。ふわりと、夕方の少し冷たい風が頬を撫でる。


グラウンドのほうからは、ちょうどサッカーボールを蹴る音が聞こえてきた。


「あっ、湊斗くんだ!」


七海の弾んだ声に、私も思わずグラウンドのほうに目を向けた。


夕日に照らされた広いグラウンドに、ひときわ目を引く彼の姿。


あ、本当だ。湊斗……!


湊斗の姿を視界に捉えた途端、私の胸が小さく跳ねる。