最強パティシエは、幼なじみに恋をする



【湊斗side】


俺は、その一部始終をただ見つめていた。


しずくが、一瞬で土台の下に滑り込み、あの重い木製の土台を両腕で軽々と支えたのを、俺は確かに見た。


その動作の速さは、常人にはありえない俊敏さだった。


──ドォォン!!


鈍い音が響き、傾きかけた土台は、しずくの両腕の中でピタリと止まった。


その衝撃で、彼女の足元は床がわずかに凹み、薄くヒビが入っていた。


誰もが先生の無事を心配して駆け寄るなか、俺はしずくの足元を注視する。


そこには、確かに小さなヒビが走っていて、彼女がどれほどの力を込めたのか、一目で分かった。


しずくは、相変わらず「大丈夫ですよー!」とヘラヘラ笑ってごまかしている。


あいつは……やっぱり、何かを隠しているのか?


俺は、これまで彼女が見せてきた不自然な力や、重いものを持つときの不器用なフリを思い出す。


そして今、誰かのために、とっさに発揮されたその力。


隠そうとしながらも、誰かを救うために動く彼女の優しさに、俺は改めて心を打たれた。


その秘めた力も、彼女の優しさも、全てがしずくらしかった。


あいつは、本当に……。


俺は、しずくへの想いを強くした。


彼女の強さと、それに伴う温かさ。その両方に、強く惹かれている自分がいた。


そのとき、白鳥もしずくの異変に気づいたようだった。


彼女は静かに、しずくの足元、そして彼女の表情を、ただ黙ってじっと見つめていた。