最強パティシエは、幼なじみに恋をする



私の周りにいた友達は、みんな驚いて一斉に後ずさる。


「やだ、しずくちゃん、怪物みたい……」


そうつぶやいた彼女の目には、友達を見ているのとは違う、おびえたような色があった。


そのおびえた目と、『怪物みたい』という言葉が……


幼い私の胸に、冷たい氷の矢のように深く突き刺さった。


あの日を境に、友達はみんな私から離れていってしまった。


だから私は、自分の怪力と高速作業能力を、心の奥に深くしまい込むことにした。


「普通」の女の子でいたいと、そう強く願うようになった。


それ以来、人前ではなるべく目立たないように、常に周りの目を気にするようになった私。


力を隠すため、重いものを持つときは、わざとゆっくり動かしたり、誰かに手伝ってもらったりした。


自分の力が、誰かを怖がらせるものだなんて、思いたくなかったから。


あの日以来、ひとりぼっちになってしまった私だけれど。唯一、心の拠り所があった。


それが、お菓子作りだ。