最強パティシエは、幼なじみに恋をする



「いいか? こうやって、手のひらで生地の塊を潰すように押して、なめらかにしていくんだ」


いつもより少しだけ低い湊斗の声が、耳元で響く。


バターの甘い香りがふわりと立ち上り、私の期待もだんだんと高まっていく。


湊斗の手つきは繊細で、粉とバターが一体となって、しっとりとした生地へと変わっていくのが分かった。


指先が触れるたび、ドキリと胸が鳴って。


まるで心臓が、彼の指先に触れた場所で跳ねているみたい。


「うん、上手くできたな」


湊斗が、満足そうに頷く。その言葉に私の胸は、温かいもので満たされた。


それからしばらくして、タルトが完成。焼き上がったタルトは、こんがりとキツネ色で、甘い香りが家庭科室いっぱいに広がった。


粗熱が取れたところで、みんなで試食することに。


「うん、美味しい!」

「サクサクしてるね」


クラスメイトの弾む声が聞こえるなか、私の作ったタルトを食べた湊斗は、何も言わずゆっくりと味わっている。


「……うん、悪くない」


そして、湊斗にしては珍しく、満足そうな表情で呟いた。


湊斗の言葉と、彼の少しだけゆるんだ口元を見た瞬間、私の胸には大きな達成感と喜びが広がる。


私は心の中で、こっそりとガッツポーズをした。