最強パティシエは、幼なじみに恋をする



「しずく、よろしくな」


湊斗が、私に小さく声をかけてくれた。


「う、うん!」


きっと今、私の頬は林檎みたいに真っ赤だろうな。


それから、調理実習が始まった。


まずは、タルト生地の仕込み作業から。ボウルに冷たい無塩バターを入れ、粉砂糖と混ぜ合わせて、柔らかくしていく。


湊斗は、手順が書かれたプリントを真剣な表情で読み込み、一つ一つの作業を丁寧にこなしていく。


彼の大きな体は、普段、部活でサッカーボールを操るときと同じように、繊細で力強かった。


「しずく。これ、下ろしていいか?」


湊斗が、棚の上にある大きな小麦粉の袋を指さした。ずっしりと重そうな袋だ。


湊斗は少し腕を傾け、袋を棚から下ろそうとしているけれど、思ったよりも重いのか、その腕が、かすかに震えているように見えた。


「よいっ……と!」


気づけば、私の体は動いていた。


「湊斗、私がやるよ!」


私は湊斗の隣に立ち、その重たい小麦粉の袋に、そっと手を添える。


そして、力を込めた瞬間、フワッと! まるで羽のように軽々と、小麦粉の袋が持ち上がった。

だけど、軽すぎた拍子に、うっかり袋の口を少し破いてしまい、白い粉がふわっと舞い上がった。まるで雪みたいに。


「えっ。月森さん、今……袋をひとりで持ってたよね!?」

「うそ。あんな重い袋を、女子ひとりで持ち上げられるの!?」


周りの班から、ざわめきが聞こえてくる。冷や汗が、つうっと背中を伝った。


お願い、みんな。私の力に気づかないで……!