それから数日後。
この日の家庭科の授業は、調理実習。
家庭科室に足を踏み入れると、オーブンから甘いバターの香りがふわりと漂ってきた。
私は持参した花柄のエプロンをつけ、頭に三角巾をきゅっと結ぶ。よし、準備完了!
今日の課題は、少し難易度の高いタルト作り。生地を薄く均一に伸ばしたり、型にきれいに敷き詰めたりと、手間のかかる作業が多い。
家庭科室の入り口に貼られたメニュー表を見ただけで、私の胸は期待で膨らんだ。
もう、頭の中は甘いタルトのことでいっぱいだ。
「今日の調理実習は、ペアを組んで行います。班は、クジ引きで決めますね」
先生の言葉に、クラス中がざわめく。ペア決めは、いつも何だかそわそわしちゃう。
私は、誰と組むことになるんだろう? 仲良しの七海と組めたら、きっと楽しいだろうな……なんて考えていたら、不意に……
「月森さん」
先生が、私の名前を呼んだ。
「月森さん、そして篠宮くん」
……え?
私の心臓が、ドクンと大きく跳ね上がった。
『篠宮くん』ってことは、つまり……湊斗とペアってこと!?
私は、斜め後ろの席に座っている湊斗をこっそりと見つめる。
湊斗は、相変わらずクールな表情で、何を考えているのかさっぱり読めないけれど。
私は内心、とてつもない喜びと、少しの緊張でいっぱいになった。
まさか、憧れの湊斗と一緒にお菓子が作れるなんて……!



