最強パティシエは、幼なじみに恋をする



自宅に到着し、私は家の中に入ろうと玄関のドアノブに手をかけた。


そのとき、ふと先ほどの湊斗との相合傘を思い出す。


彼の大きな手、隣で聞こえた優しい息遣い。


まだ頬に熱が残っている気がして、胸がドキドキと加速する。


早くこの熱い気持ちを落ち着かせたいと、焦る気持ちからか、私はいつもよりもドアノブをぎゅっと強く握ってしまった。


──ミシッ!


鈍く、嫌な音がして、ドアノブがわずかに軋んだ。


「え、うそ!?」


思わず息を呑む。慌てて手を離すと、ドアノブが明らかに傾いているのが目に入った。


ひんやりとした冷たい汗が、背中を伝う。


どうしよう、またやっちゃった……!


心臓がドクンと大きく鳴り響く。


こんなこと、誰にも知られたくない。家族にもこれ以上、余計な心配や迷惑をかけたくないのに……。


もし壊れていたら、お母さんになんて言い訳しよう……。思考がぐるぐると駆け巡る。


「はぁ……」


静かに深呼吸をして、私は震える手でそっとドアノブに触れる。


祈るような気持ちで、ゆっくりと回し直してみると……。


カチッと、わずかな手応えとともに、なんとかドアノブが元の位置に戻った。


はぁ、良かった……。


私はホッと安堵の息を漏らし、そのまま玄関のドアを滑り込むように開けた。


なんだか今日は、色々とドキドキしっぱなしだよ……。