最強パティシエは、幼なじみに恋をする



私、月森(つきもり)しずくには、誰にも言えない秘密がある。


それは、生まれつき人並み外れた怪力の持ち主だということ。


そして、それ以上に驚異的なのは、手の速さ――何でもあっという間に終わらせてしまう、高速作業能力だ。


お母さんいわく、小さな頃からその片鱗はあちこちで見えていたらしい。


おもちゃのブロックを組み立てているときも、うっかり力を入れすぎて、パキッと音を立てて粉々にしてしまったり。


公園の砂場で、友達数人で力を合わせてもビクともしない大きな石を、私が一人で軽々と持ち上げて、周りの大人をびっくりさせていたのだとか。


それだけでなく、私の手は、何をするにもあっという間に終わってしまうほど、とにかく速かった。


砂場で泥団子を作ろうとすると、友達が1個やっと形にする間に、私はキュッキュッと手のひらで丸め、つるつるに磨き上げた泥団子を5つも6つも完成させていた。


友達は『しずくちゃん、魔法使いみたい!』って笑ってくれるけれど、私はドキッとして、慌てて手を止めた。


そんなある日のこと。あれは、小学校に入学する前のことだったと思う。


桜の蕾が膨らみ始めた、穏やかな春の日。


いつもの公園で私は、幼なじみの男の子や近所の友達みんなで遊んでいた。


鬼ごっこをしていたとき、私はふと、地面にしっかり固定された大きな鉄棒の柱に目がとまった。


友達みんなで押しても、ビクともしないその柱を、私は好奇心いっぱいの目で見つめた。


もしかしたら、動かせるかも? そう思った私は……。


「ねえ。これ、私が動かしてあげる!」


無邪気にそう言って、私は両手でその柱をぎゅっとつかんだ。


そして、ほんの少し力を入れた瞬間――。


ミシミシッ! ガコン!


嫌な音とともに柱が地面から少し浮き上がり、がくんと傾いた。


「きゃーっ!」


その瞬間、辺りには悲鳴が飛び交った。