○ショッピングモール
家族連れや友達同士、カップルで賑わう休日のショッピングモール。
待ち合わせ中の七瀬光瑠(18)は、マロンカラーのマッシュショートヘアにキャップをかぶり、クリーム色のスウェットにワイドカーゴパンツ、スニーカーを合わせたシンプルなメンズライクファッション。
春服に身を包んだオシャレな女子たちが行き交うのを微笑ましく眺める。
美空「ごめんお待たせー!」
一方、走ってやって来た高柳美空(18)は、花柄のワンピースにデニムジャケットを合わせた王道な甘辛ミックスコーデ。
光瑠「大丈夫、さっき来たとこ」 ※まるで彼氏のように。
美空「行こっか!」
合流した2人はショッピングモールの中を回る。
○ショッピングモール・ジュエリーショップ
光瑠と美空がピアスを見ている。
美空「これとかどう?」
光瑠「うん、可愛い」
店員「そちらペアで購入される方が多いんですよ。彼氏さんも良かったらぜひ」
美空「いや、光瑠は彼氏じゃ……!」
美空は店員に説明しようとするが、光瑠がその言葉を遮る。
光瑠「いいね。お揃いにする?」
彼氏のように振る舞う光瑠を悲しい表情で見る美空。
○ショッピングモール・服屋
続いて服屋に入る光瑠と美空。
美空「ねぇ! これどう?」
後ろのスリットからレースが見え、ベルトを縛るとワンピースのようになるトレンチコートを光瑠に見せる。
光瑠「可愛い。絶対美空に似合うよ」
美空「違う! 光瑠に似合うと思ったの! せっかくだから試着してきなよ」
光瑠「私には合わないよ」 ※笑いながら。
美空「そんなことない!」
美空の声が思いの外大きくて、光瑠は驚く。
美空「大学生になって、光瑠は一人暮らしも始めたじゃん。これからは光瑠が着たいものを着て、光瑠がやりたいことをやればいいんだよ。ね!」
光瑠「うん。ありがと、美空」 ※ニッコリ笑う。
美空「もぉーー」 ※光瑠の反応に不満そう。
○光瑠の一人暮らしの家(朝)
小さなマンションの一室、部屋の中はシンプルな家具で統一されている。
大学に行く準備をしている光瑠は、花柄のワンピースを着て全身鏡の前に立つ。
揺れてみたり、後ろを振り返ったりして動いてみるが、鏡に映った自分を見ると、
光瑠「(怪訝な顔で)ないない」
光瑠は首を横に振ってワンピースを脱ぐ。
胸にさらしを巻き、フード付きのスウェットにワイドデニムを履いて再び鏡の前へ。
光瑠「うん。こっちの方が落ち着く」
光瑠モノ『小4のあの日からずっと……これが私・七瀬光瑠だ』
○大学・キャンパス内(朝)
都会ながら緑を取り込み、光が差し込んだ広いキャンパス。
キャンパスの中では楽器を吹く者、デッサンをするもの、友達と会話する者、昼寝する者、勉強する者など様々で賑やか。
光瑠はデザイン科の講義棟の前で立ち止まる。
ショーウィンドウの中には服を着たマネキンが何体か並べられ、その中のトレンチコートに釘付けになる。【最優秀賞】と書かれている。
光瑠「か、かわいい!」 ※目をキラキラさせながら。
ベージュとブラックのバイカラーになっていて、ボタンの部分が特徴的なデザイン性のあるトレンチコート。
しかし光瑠は突然我に返る。
光瑠(こらこら私。どう見てもレディースに決まって……いや、メンズ……?)
コートを着ているのはメンズのマネキン。
光瑠(これなら……)
光瑠がショーウィンドウに向かって手を伸ばすと、後ろから急に声をかけられる。
男「ねぇ」
光瑠は声の方を見ずに顔を逸らす。
光瑠(げ、見られてた……!?)
警戒する光瑠にお構いなしに、その男はさらに「そのコート」と話を続けようとするが、その時。
女子1「柊斗さーん」
女子2「今日授業ですか?」
女子3「もうお昼食べました?」
女子たちがキャーキャー言いながら男の周りに集まってくる。
光瑠(ラッキー。いまのうちに!)
その隙に光瑠は一目散に走ってその場を離れる。
しかし男は、集まって来た女子たちに笑顔で対応しながら、走って行った光瑠の背中を気にする。
○大学・講義室
光瑠(あんなキャーキャー言われるなんて、一体どんなビジュアルだったんだろ。アイドル顔負けのご尊顔かな)
光瑠はあれこれ考えながら講義室に入り、席に座る。
すると隣にドンとリュックサックを置いて海老原櫂(18)が座る。
ピンクの短髪、人懐っこさが見た目から滲み出たワンコ系男子。
櫂「なぁ光瑠〜聞いてくれよ!」
光瑠「なに、また可愛い子でも見つけた?」
櫂「正解! マジで天使だった……」
光瑠「この間も天使見つけたって言ってたけど?」
櫂「間違えた。さっきの子は女神!」
調子のいい櫂に半ば呆れながら、それでもちゃんと話を聞く光瑠。
光瑠モノ『このピンク頭は海老原櫂。入学して初めて喋った友達。私のことをなんの疑いもなく男だと思ってる』『まぁ無理もないよね。175センチという日本人にしては低くはない身長に、この格好。そして6年間のバレーボール部で鍛えられたこの肉体。どこからどう見ても男だ』
光瑠が櫂の話を聞いていると、女子が2人集まってくる。
上原希(18)と山崎玲奈(18)。
明るくてオシャレな、いわゆる一軍女子たち。
希「また光瑠くんにしょうもない話してんの?」
櫂「しょうもない話とは失礼だな」
希「だってホントのことだし。こんなとこで報告してないで、直接声かければいいじゃん。『一目惚れしましたー』って」
玲奈「もういっそのこと光瑠くんにナンパしてもらえば?」
櫂「それじゃあ光瑠にとられんじゃん!」
玲奈「大丈夫だよ。光瑠くん彼女いるもんね?」
光瑠「……ごめん、いない」
希「えー意外! 絶対高校から付き合ってる彼女とかいると思ってた!」
光瑠「『友達に戻りたい』ってフラれた」
光瑠モノ『まぁ彼女じゃなくて彼氏だけど、フラれたのは事実。その後すぐあっちには小柄で可愛らしい彼女ができてた』 ※懐かしむ。
玲奈「光瑠くんがフラれるなんて、彼女どんだけスペック高いの!?」
光瑠は苦笑いが止まらない。
光瑠モノ『みんな根本から色々勘違いしてるわけだけど……別にこれでいい。高校までと違って、プールの授業なんてないし、制服もない。私が女だと気付かれるイベントはまずないし』
希「そうだ。玲奈健康診断予約した?」
玲奈「まだしてなーい。一緒行こ!」
櫂「俺らも行かないとな」
光瑠「あ……」 ※冷や汗をかき始める。
光瑠(あるじゃん気づかれるイベント!)
○大学・キャンパス内(後日)
ロングヘアのウィッグを付けて、花柄のワンピースを着た光瑠が俯きながら足速にキャンパス内を歩く。
光瑠(はぁ……なんとか終わった……ボッチにしてごめん海老原! 許して!)
すると向かいから希と玲奈が歩いてくる。
光瑠(ヤバっ!)
光瑠が勢いよく振り返り、来た道を引き返そうとすると、振り返りざまに誰かとぶつかってしまう。
反動で後ろに倒れそうになった光瑠は肩をぐっと引き寄せられ、至近距離で天音柊斗(21)と見つめ合う。
柊斗の美貌に息を呑む光瑠。
光瑠よりも背が高く、毛流れセンターパートの黒髪に、切れ長な目と陶器のような艶肌の男。
柊斗「大丈夫?」 ※まるで王子のように優しく微笑みかける。
光瑠(……アイドル顔負けの、ご尊顔……)
家族連れや友達同士、カップルで賑わう休日のショッピングモール。
待ち合わせ中の七瀬光瑠(18)は、マロンカラーのマッシュショートヘアにキャップをかぶり、クリーム色のスウェットにワイドカーゴパンツ、スニーカーを合わせたシンプルなメンズライクファッション。
春服に身を包んだオシャレな女子たちが行き交うのを微笑ましく眺める。
美空「ごめんお待たせー!」
一方、走ってやって来た高柳美空(18)は、花柄のワンピースにデニムジャケットを合わせた王道な甘辛ミックスコーデ。
光瑠「大丈夫、さっき来たとこ」 ※まるで彼氏のように。
美空「行こっか!」
合流した2人はショッピングモールの中を回る。
○ショッピングモール・ジュエリーショップ
光瑠と美空がピアスを見ている。
美空「これとかどう?」
光瑠「うん、可愛い」
店員「そちらペアで購入される方が多いんですよ。彼氏さんも良かったらぜひ」
美空「いや、光瑠は彼氏じゃ……!」
美空は店員に説明しようとするが、光瑠がその言葉を遮る。
光瑠「いいね。お揃いにする?」
彼氏のように振る舞う光瑠を悲しい表情で見る美空。
○ショッピングモール・服屋
続いて服屋に入る光瑠と美空。
美空「ねぇ! これどう?」
後ろのスリットからレースが見え、ベルトを縛るとワンピースのようになるトレンチコートを光瑠に見せる。
光瑠「可愛い。絶対美空に似合うよ」
美空「違う! 光瑠に似合うと思ったの! せっかくだから試着してきなよ」
光瑠「私には合わないよ」 ※笑いながら。
美空「そんなことない!」
美空の声が思いの外大きくて、光瑠は驚く。
美空「大学生になって、光瑠は一人暮らしも始めたじゃん。これからは光瑠が着たいものを着て、光瑠がやりたいことをやればいいんだよ。ね!」
光瑠「うん。ありがと、美空」 ※ニッコリ笑う。
美空「もぉーー」 ※光瑠の反応に不満そう。
○光瑠の一人暮らしの家(朝)
小さなマンションの一室、部屋の中はシンプルな家具で統一されている。
大学に行く準備をしている光瑠は、花柄のワンピースを着て全身鏡の前に立つ。
揺れてみたり、後ろを振り返ったりして動いてみるが、鏡に映った自分を見ると、
光瑠「(怪訝な顔で)ないない」
光瑠は首を横に振ってワンピースを脱ぐ。
胸にさらしを巻き、フード付きのスウェットにワイドデニムを履いて再び鏡の前へ。
光瑠「うん。こっちの方が落ち着く」
光瑠モノ『小4のあの日からずっと……これが私・七瀬光瑠だ』
○大学・キャンパス内(朝)
都会ながら緑を取り込み、光が差し込んだ広いキャンパス。
キャンパスの中では楽器を吹く者、デッサンをするもの、友達と会話する者、昼寝する者、勉強する者など様々で賑やか。
光瑠はデザイン科の講義棟の前で立ち止まる。
ショーウィンドウの中には服を着たマネキンが何体か並べられ、その中のトレンチコートに釘付けになる。【最優秀賞】と書かれている。
光瑠「か、かわいい!」 ※目をキラキラさせながら。
ベージュとブラックのバイカラーになっていて、ボタンの部分が特徴的なデザイン性のあるトレンチコート。
しかし光瑠は突然我に返る。
光瑠(こらこら私。どう見てもレディースに決まって……いや、メンズ……?)
コートを着ているのはメンズのマネキン。
光瑠(これなら……)
光瑠がショーウィンドウに向かって手を伸ばすと、後ろから急に声をかけられる。
男「ねぇ」
光瑠は声の方を見ずに顔を逸らす。
光瑠(げ、見られてた……!?)
警戒する光瑠にお構いなしに、その男はさらに「そのコート」と話を続けようとするが、その時。
女子1「柊斗さーん」
女子2「今日授業ですか?」
女子3「もうお昼食べました?」
女子たちがキャーキャー言いながら男の周りに集まってくる。
光瑠(ラッキー。いまのうちに!)
その隙に光瑠は一目散に走ってその場を離れる。
しかし男は、集まって来た女子たちに笑顔で対応しながら、走って行った光瑠の背中を気にする。
○大学・講義室
光瑠(あんなキャーキャー言われるなんて、一体どんなビジュアルだったんだろ。アイドル顔負けのご尊顔かな)
光瑠はあれこれ考えながら講義室に入り、席に座る。
すると隣にドンとリュックサックを置いて海老原櫂(18)が座る。
ピンクの短髪、人懐っこさが見た目から滲み出たワンコ系男子。
櫂「なぁ光瑠〜聞いてくれよ!」
光瑠「なに、また可愛い子でも見つけた?」
櫂「正解! マジで天使だった……」
光瑠「この間も天使見つけたって言ってたけど?」
櫂「間違えた。さっきの子は女神!」
調子のいい櫂に半ば呆れながら、それでもちゃんと話を聞く光瑠。
光瑠モノ『このピンク頭は海老原櫂。入学して初めて喋った友達。私のことをなんの疑いもなく男だと思ってる』『まぁ無理もないよね。175センチという日本人にしては低くはない身長に、この格好。そして6年間のバレーボール部で鍛えられたこの肉体。どこからどう見ても男だ』
光瑠が櫂の話を聞いていると、女子が2人集まってくる。
上原希(18)と山崎玲奈(18)。
明るくてオシャレな、いわゆる一軍女子たち。
希「また光瑠くんにしょうもない話してんの?」
櫂「しょうもない話とは失礼だな」
希「だってホントのことだし。こんなとこで報告してないで、直接声かければいいじゃん。『一目惚れしましたー』って」
玲奈「もういっそのこと光瑠くんにナンパしてもらえば?」
櫂「それじゃあ光瑠にとられんじゃん!」
玲奈「大丈夫だよ。光瑠くん彼女いるもんね?」
光瑠「……ごめん、いない」
希「えー意外! 絶対高校から付き合ってる彼女とかいると思ってた!」
光瑠「『友達に戻りたい』ってフラれた」
光瑠モノ『まぁ彼女じゃなくて彼氏だけど、フラれたのは事実。その後すぐあっちには小柄で可愛らしい彼女ができてた』 ※懐かしむ。
玲奈「光瑠くんがフラれるなんて、彼女どんだけスペック高いの!?」
光瑠は苦笑いが止まらない。
光瑠モノ『みんな根本から色々勘違いしてるわけだけど……別にこれでいい。高校までと違って、プールの授業なんてないし、制服もない。私が女だと気付かれるイベントはまずないし』
希「そうだ。玲奈健康診断予約した?」
玲奈「まだしてなーい。一緒行こ!」
櫂「俺らも行かないとな」
光瑠「あ……」 ※冷や汗をかき始める。
光瑠(あるじゃん気づかれるイベント!)
○大学・キャンパス内(後日)
ロングヘアのウィッグを付けて、花柄のワンピースを着た光瑠が俯きながら足速にキャンパス内を歩く。
光瑠(はぁ……なんとか終わった……ボッチにしてごめん海老原! 許して!)
すると向かいから希と玲奈が歩いてくる。
光瑠(ヤバっ!)
光瑠が勢いよく振り返り、来た道を引き返そうとすると、振り返りざまに誰かとぶつかってしまう。
反動で後ろに倒れそうになった光瑠は肩をぐっと引き寄せられ、至近距離で天音柊斗(21)と見つめ合う。
柊斗の美貌に息を呑む光瑠。
光瑠よりも背が高く、毛流れセンターパートの黒髪に、切れ長な目と陶器のような艶肌の男。
柊斗「大丈夫?」 ※まるで王子のように優しく微笑みかける。
光瑠(……アイドル顔負けの、ご尊顔……)



