そんな俺たちに和之が生まれた。 やつだってもう27になる。
そんな和之が告白されたって言ってきた。 生涯初めての慶事だねえ。
どんな感じで進んでいくのかなあ? 今は昔とは違うからなあ。
結婚式だって滅多に見なくなった。 葬式だってそんなに見なくなった。
だから結婚式場もバタバタと閉鎖されたんだ。 昔はそれこそ何十人も人を集めて挙式だ披露宴だってやったもんだけど、、、。
昔はさあ親の縁者が多く来てたんだよね。 今は自分たちの友達がせいぜい集まるくらい。
葬式だってそうだろう。 昔は親族親類皆集まって縁者もわんさと押し掛けてお仏前だ何だって喧しかった。
仏前には必ず坊様が何人か座っててお経を読んでいた。 室内は線香の匂いが噎せ返るくらいで、、、。
これまたお焼香だ何だって忙しかったなあ。 そうそう、火葬して帰ってくるとその場で初七日までやっちまうことになったんだよな。
今はどうだ? 家族葬 友人葬 自然葬が増えちまったよなあ。
坊様も呼ばなくなった。 お布施も無くなった。
お経も少なくなった。 録音されたcdを流してたりしてさ。
ついでに言えば昔みたいな湿っぽい空気を感じなくなったよね。 音楽葬なんてのもやるくらいだから。
「麻理はさあ、葬式はどうしたいんだ?」 「そうねえ、あなたと一緒に寝たいわ。」
「え? 俺も一緒に死ぬのか?」 「別に死ななくてもいいわよ。 ただ隣に居てほしいだけ。」
「そうか、じゃあでっかい棺桶を作らないとなあ。」 「棺桶に入ったらあなたまで燃やされちゃうわよ。」
「やばいやばい。 それは困る。」 「そうでしょう? だから布団に寝ててほしいの。」
「そうか、、、ということは?」 俺はニヤニヤしながら麻理のお腹を見詰めた。
「あなたさあ、またエッチなことを考えてるでしょう?」 「無い無い。」
「嘘吐け。 その目は何よ? いやらしいおっさんみたいな、、、。」 「それはその、、、。」
「いいわよ。 私が死んでたって抱いてくれても。」 「そうなのか。 良かった。」
「ほら見ろ。 変態目!」 またまた拳骨が飛んできたのであーーーーる。
まったく麻理には勝てない俺なのであります。 30年間、こいつの尻に敷かれっぱなしなのだよ。
和之が生まれた頃、おむつ当番は俺だった。 「おっぱいは私がやるからあなたはおむつを換えてね。」
ニコニコしながら麻理に言われておむつを持った俺、、、。 (なかなかに似合ってるな。)ってふと思ってしまった。
幼稚園の入園式から始まって高校の卒業式まで夫婦揃って出席した。 もちろんpTAの会合にも休まずに参加した。
「あんたらほど馬鹿真面目に会合に出てくる夫婦も居ないんだけど無職なのか?」って聞いてくる役員が居たから警察手帳を見せてやった。
そしたらそいつは急に蒼くなって土下座して詫び始めたから麻理が切れた。 「こんなの相手しなくていいから帰りましょう。」ってね。
ほんとに変な人間が増えたもんだよ。 真面目にやってればこそこそ文句を言い、適当に投げてると本気で怒りだす。
平成時代から日本人もおかしくなったんだよなあ。 変な宗教も増えた。
そういえば「私は仏だ!」って絶叫してたあのおばさんはどうしたろうねえ? だいたいなあ、仏様が「俺は仏だ! 言うことを聞け!」なんて言うかってんだ。
頭を叩いて病人を生き返らせようとしてたおっさんも居たよなあ? あのおっさんはどうしたね?
白装束で練り歩いていた集団はどうしたね? 「地球が電磁波に汚染されるーーーーー!」とか言ってたらしいけど。
確かに今の地球は電磁波と放射能だらけだよ。 病院だってレントゲンだctだって放射線を使いまくってる。
カーナビだ 速度測定器だ センサーだってあっちこっちで電磁波を浴び捲ってるんだよな 俺たち。 そりゃあそんなんで無事でいられるわけが無い。
とは思うけどそんなのを騒いだところで何になる? 変人が一人増えたな、、、くらいだよ。
今や郵便局も超デジタル化されちまってボックスに放り込んだら勝手に地域別に分別されちまってる。
昔は一つ一つ人間様が目で見て確認して地域別に振り分けてたんだぞ。 今やその必要も無くなった。
だから郵便も速くなったよなあ。 いつだったか、市内の郵便が混乱しまくったことが有る。
市内のポストから投函してるのに宛先に届くまでに2週間も掛かっちまってさ。 不思議だなって思ってた。
聞いてみたら局員のずる休みが原因だったらしい。 それでもって電子識別装置の導入を進めたんだそうだ。
まったくさあ人の迷惑顧みず、ずる休みをしまくる連中の気が知れないよ。 あんなの人間じゃねえ。
そういえば30年前にはしこたま死ぬほどに叩かれまくったバーガー屋さんもバーコード追跡を導入したって言ってたな。 おもちゃだけ持って行かれるんじゃあ商売上がったりだからね。
レジを通す時にバーコードで情報をキャッチしておく。 後はネットで追跡するだけ。
転売されようものならアップされた時点で自動的にアラームが鳴る。 こちらから指示すればサイトから勝手に情報が削除されてしまう。
再アップしようにもブロックが掛けられていて弾かれるだけ。 それどころか警察に通報されて位置情報も全部公開される。
これだから最初は転売ヤーがごそっと逮捕されて全ての情報が社会に公開されてしまった。 外国人も居たし有名企業や大学の人間も居た。
こっそり隠れて大儲けしてた30年前とは変わっちまったなあ。 でもさ、買うやつが居るから転売は無くならないんだよ。
企業云々の前に買うやつを何で攻めなかったんだろう? 売れなくなれば誰もやらないよ。
売れるから面白くてやるんだ。 パチンコで大当たりを連発するようなもんだね。
スマホだって転売されたことが有るよねえ。 ショップはそのたびに大騒ぎだった。
姉ちゃんもその巻き添えを食らって何回も調べられたんだって。 抜け出すから疑われるよなあ、そりゃ。
あっちでこっちで転売だ何だって騒がれてるうちに「顔を見たら泥棒と思え。」ってみんなが言い始めた。
これじゃあ地域仲良く出来るわけが無い。 町内会だって年寄りの互助会になっちまったし。
それだからか、あっちでこっちで刺したの刺されたのって騒ぎが毎日起きるようになっちまった。 日本も終わったな。
これぞ『the末法』って感じですわ。 青葉俊介も真っ青ねえ。
夜中、二人並んで寝てるはずなのに、麻理が居なくなった。 「おいおい、何処に行ったんだ?」
寝室を出て長い長い廊下を当てもなく歩いて行きますが、、、。 先のほうに小さな光が見えます。
だんだんと廊下が狭くなってきた。 そして紙一枚がやっと通るくらいの隙間にぶつかった。
「おいおい、これじゃあ通らないよ。 どうするんだよ?」 もがいている俺の耳元に懐かしい声が聞こえてきた。
「良太も来たのかい? そーーーーーーっと隙間に入ってごらん。 入るから大丈夫。」 ずっと前に死んだ母ちゃんだ。
隙間に体を入れて動こうとしていると、、、。 「重たいなあ。 バカ!」というう声が聞こえた。
「いてえ!」 目を覚ました俺は驚いた。
「まったくもう、何してんのよ?」 「何してんのよって言われても廊下を歩いてたんだよ。」
「だから私の上を歩いてたの?」 「お前の上を?」
「そうよ。 重たいし踏まれて痛いし真夜中に変なことしないで。」 「夢か、、、。」
「夢?」 「そうだ。 長い長い廊下を何処までも歩いて行く夢を見たんだ。」
「もしかしてお母さんにでも呼ばれたんじゃないの?」 「ああ、母ちゃんに会ったよ。」
「お父さんも長くないのね?」 「何だよ、いきなり?」
「だってさあ、親とか親戚に夢で会ったら長くないって言うじゃない。」 「そうなのか?」
「いいわ。 明日さあ私がお祓いしてあげる。」 「お祓い?」
「そうよ。 今のうちに祓っとかないと不幸になるから。」 「そんな大げさな、、、。」
「あなたのためよ。 ずーーーーーーーーーっと長生きしてほしいから。」 「分かった。 分かったよ。」
夜明け間近の寝室で二人はこうして余生を幸せに過ごすためにやるべきことを考え出したのでありました。 チャンチャン。
そんな和之が告白されたって言ってきた。 生涯初めての慶事だねえ。
どんな感じで進んでいくのかなあ? 今は昔とは違うからなあ。
結婚式だって滅多に見なくなった。 葬式だってそんなに見なくなった。
だから結婚式場もバタバタと閉鎖されたんだ。 昔はそれこそ何十人も人を集めて挙式だ披露宴だってやったもんだけど、、、。
昔はさあ親の縁者が多く来てたんだよね。 今は自分たちの友達がせいぜい集まるくらい。
葬式だってそうだろう。 昔は親族親類皆集まって縁者もわんさと押し掛けてお仏前だ何だって喧しかった。
仏前には必ず坊様が何人か座っててお経を読んでいた。 室内は線香の匂いが噎せ返るくらいで、、、。
これまたお焼香だ何だって忙しかったなあ。 そうそう、火葬して帰ってくるとその場で初七日までやっちまうことになったんだよな。
今はどうだ? 家族葬 友人葬 自然葬が増えちまったよなあ。
坊様も呼ばなくなった。 お布施も無くなった。
お経も少なくなった。 録音されたcdを流してたりしてさ。
ついでに言えば昔みたいな湿っぽい空気を感じなくなったよね。 音楽葬なんてのもやるくらいだから。
「麻理はさあ、葬式はどうしたいんだ?」 「そうねえ、あなたと一緒に寝たいわ。」
「え? 俺も一緒に死ぬのか?」 「別に死ななくてもいいわよ。 ただ隣に居てほしいだけ。」
「そうか、じゃあでっかい棺桶を作らないとなあ。」 「棺桶に入ったらあなたまで燃やされちゃうわよ。」
「やばいやばい。 それは困る。」 「そうでしょう? だから布団に寝ててほしいの。」
「そうか、、、ということは?」 俺はニヤニヤしながら麻理のお腹を見詰めた。
「あなたさあ、またエッチなことを考えてるでしょう?」 「無い無い。」
「嘘吐け。 その目は何よ? いやらしいおっさんみたいな、、、。」 「それはその、、、。」
「いいわよ。 私が死んでたって抱いてくれても。」 「そうなのか。 良かった。」
「ほら見ろ。 変態目!」 またまた拳骨が飛んできたのであーーーーる。
まったく麻理には勝てない俺なのであります。 30年間、こいつの尻に敷かれっぱなしなのだよ。
和之が生まれた頃、おむつ当番は俺だった。 「おっぱいは私がやるからあなたはおむつを換えてね。」
ニコニコしながら麻理に言われておむつを持った俺、、、。 (なかなかに似合ってるな。)ってふと思ってしまった。
幼稚園の入園式から始まって高校の卒業式まで夫婦揃って出席した。 もちろんpTAの会合にも休まずに参加した。
「あんたらほど馬鹿真面目に会合に出てくる夫婦も居ないんだけど無職なのか?」って聞いてくる役員が居たから警察手帳を見せてやった。
そしたらそいつは急に蒼くなって土下座して詫び始めたから麻理が切れた。 「こんなの相手しなくていいから帰りましょう。」ってね。
ほんとに変な人間が増えたもんだよ。 真面目にやってればこそこそ文句を言い、適当に投げてると本気で怒りだす。
平成時代から日本人もおかしくなったんだよなあ。 変な宗教も増えた。
そういえば「私は仏だ!」って絶叫してたあのおばさんはどうしたろうねえ? だいたいなあ、仏様が「俺は仏だ! 言うことを聞け!」なんて言うかってんだ。
頭を叩いて病人を生き返らせようとしてたおっさんも居たよなあ? あのおっさんはどうしたね?
白装束で練り歩いていた集団はどうしたね? 「地球が電磁波に汚染されるーーーーー!」とか言ってたらしいけど。
確かに今の地球は電磁波と放射能だらけだよ。 病院だってレントゲンだctだって放射線を使いまくってる。
カーナビだ 速度測定器だ センサーだってあっちこっちで電磁波を浴び捲ってるんだよな 俺たち。 そりゃあそんなんで無事でいられるわけが無い。
とは思うけどそんなのを騒いだところで何になる? 変人が一人増えたな、、、くらいだよ。
今や郵便局も超デジタル化されちまってボックスに放り込んだら勝手に地域別に分別されちまってる。
昔は一つ一つ人間様が目で見て確認して地域別に振り分けてたんだぞ。 今やその必要も無くなった。
だから郵便も速くなったよなあ。 いつだったか、市内の郵便が混乱しまくったことが有る。
市内のポストから投函してるのに宛先に届くまでに2週間も掛かっちまってさ。 不思議だなって思ってた。
聞いてみたら局員のずる休みが原因だったらしい。 それでもって電子識別装置の導入を進めたんだそうだ。
まったくさあ人の迷惑顧みず、ずる休みをしまくる連中の気が知れないよ。 あんなの人間じゃねえ。
そういえば30年前にはしこたま死ぬほどに叩かれまくったバーガー屋さんもバーコード追跡を導入したって言ってたな。 おもちゃだけ持って行かれるんじゃあ商売上がったりだからね。
レジを通す時にバーコードで情報をキャッチしておく。 後はネットで追跡するだけ。
転売されようものならアップされた時点で自動的にアラームが鳴る。 こちらから指示すればサイトから勝手に情報が削除されてしまう。
再アップしようにもブロックが掛けられていて弾かれるだけ。 それどころか警察に通報されて位置情報も全部公開される。
これだから最初は転売ヤーがごそっと逮捕されて全ての情報が社会に公開されてしまった。 外国人も居たし有名企業や大学の人間も居た。
こっそり隠れて大儲けしてた30年前とは変わっちまったなあ。 でもさ、買うやつが居るから転売は無くならないんだよ。
企業云々の前に買うやつを何で攻めなかったんだろう? 売れなくなれば誰もやらないよ。
売れるから面白くてやるんだ。 パチンコで大当たりを連発するようなもんだね。
スマホだって転売されたことが有るよねえ。 ショップはそのたびに大騒ぎだった。
姉ちゃんもその巻き添えを食らって何回も調べられたんだって。 抜け出すから疑われるよなあ、そりゃ。
あっちでこっちで転売だ何だって騒がれてるうちに「顔を見たら泥棒と思え。」ってみんなが言い始めた。
これじゃあ地域仲良く出来るわけが無い。 町内会だって年寄りの互助会になっちまったし。
それだからか、あっちでこっちで刺したの刺されたのって騒ぎが毎日起きるようになっちまった。 日本も終わったな。
これぞ『the末法』って感じですわ。 青葉俊介も真っ青ねえ。
夜中、二人並んで寝てるはずなのに、麻理が居なくなった。 「おいおい、何処に行ったんだ?」
寝室を出て長い長い廊下を当てもなく歩いて行きますが、、、。 先のほうに小さな光が見えます。
だんだんと廊下が狭くなってきた。 そして紙一枚がやっと通るくらいの隙間にぶつかった。
「おいおい、これじゃあ通らないよ。 どうするんだよ?」 もがいている俺の耳元に懐かしい声が聞こえてきた。
「良太も来たのかい? そーーーーーーっと隙間に入ってごらん。 入るから大丈夫。」 ずっと前に死んだ母ちゃんだ。
隙間に体を入れて動こうとしていると、、、。 「重たいなあ。 バカ!」というう声が聞こえた。
「いてえ!」 目を覚ました俺は驚いた。
「まったくもう、何してんのよ?」 「何してんのよって言われても廊下を歩いてたんだよ。」
「だから私の上を歩いてたの?」 「お前の上を?」
「そうよ。 重たいし踏まれて痛いし真夜中に変なことしないで。」 「夢か、、、。」
「夢?」 「そうだ。 長い長い廊下を何処までも歩いて行く夢を見たんだ。」
「もしかしてお母さんにでも呼ばれたんじゃないの?」 「ああ、母ちゃんに会ったよ。」
「お父さんも長くないのね?」 「何だよ、いきなり?」
「だってさあ、親とか親戚に夢で会ったら長くないって言うじゃない。」 「そうなのか?」
「いいわ。 明日さあ私がお祓いしてあげる。」 「お祓い?」
「そうよ。 今のうちに祓っとかないと不幸になるから。」 「そんな大げさな、、、。」
「あなたのためよ。 ずーーーーーーーーーっと長生きしてほしいから。」 「分かった。 分かったよ。」
夜明け間近の寝室で二人はこうして余生を幸せに過ごすためにやるべきことを考え出したのでありました。 チャンチャン。

