はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま熱愛中。

 はーーあ、こうやって妻と二人お風呂に入れるのもあと何年だろうなあ? 「そんなこと言っても分からないわよ。 あなたは宇宙人なんだから。」
「じゃあお前はどうなんだよ?」 「私は日本人よ。 ウフ。」
 湯に体を浸けてお互いを見詰め合う。 新婚当時みたいな夜だ。
ぼんやりと天井に目をやる。 相当に脆くなっているのが分かる。
 麻理が不意に湯から出て体を洗い始めた。 「見ないでね。」
「オー。」 「何 かっこつけてんだよ? そうやって覗き見してんだろうが。」
「してねえよ。」 「じゃあさあ今、何を見てたの?」
「洗面器。」 「ごまかしたって分かるわよ。 洗面器を追い掛けながらおっぱいを見てたでしょう?」
「、、、。」 「黙って固まってなさい。」
 新婚当時もそうだったなあ。 それまでは姉ちゃんと一緒に入ってたからさあ。
「あなたってお姉さんと一緒に入ってたのね?」 「そうだよ。」
「何とも思わなかったの?」 「子供の頃からそうだったから。」
「だからお姉さんに付け込まれてたのね。 きっちり言わせてもらうわ。」 「おいおい、、、。」
「ダメよ。 あなたは私のご主人なんだから。」 「そうだな、、、。」
「何 寂しそうにしてるの? お姉さんの体が恋しい?」 「そんなんじゃなくて、、、。」
「いいこと。 お姉さんとは金輪際お風呂に入っちゃダメよ。」 「分かった。」
 その後、麻理は姉ちゃんにも厳しく言ったんだよな。 確かにそうだよ。
手頃だったけどさあ、姉は姉。 弟は弟なんだ。
線を引くところは線を引かなきゃね。 おかしくなるから。
 それで姉ちゃんは婚活もやってみたんだけどなかなかに相手は見付からなかった。 そして時は流れた。
ゴン。 「いてえ!」
「寝てたでしょう?」 「いや、、、。」
「その驚きようは寝てたのね? 妻が居るのに寝てるなんて、、、。」 「ごめんごめん。」
「あなたも年なのねえ。 もう少し早い時間に入りましょうねえ。」
なんか麻理が介護士に見えてくる。 今から俺は介護されてるのか?
 「上がったら好きにしていいからね。 お父さん。」 湯に浸かった麻理がキスをしてきた。
だから今夜も思い切り燃え上がるのでーーーーーーーす。 単純だなあ。

 「ドンガラガッチャンスッケンドン。 ドンガラガッチャンスッケンドン。」 「なんか変なのが来たわねえ。」
「ほっといていいよ。 小判だろう?」 「ドンドンガラガラドンガッチャン。 ドンドンガラガラドンガッチャン。」
「飽きねえなあ。 ああやって30年もやってたのか?」 窓から顔を出してみる。
「やあ兄貴。 久しぶりーーーーー。」 「引っ込め変態!」
「ひでえなあ。 変態は無いよ。」 「変態だろうがよ。 嫁さんのパンツを覗いておいて。」
「まだ覚えてるんすか? 忘れてくださいよーーーーー。」 「忘れるか ボケ!」
「うわ、見ちゃったああ。」 窓から麻理が顔を出したのを見て小判が真っ赤な顔になった。
「え? 何を見たの?」 不思議そうな麻理に俺は忠告した。
「お前が伸び上がってるから胸が見えたんだよ。」 「まあ変態。 キャー!」
その瞬間、麻理は洗面器ごと小判にお湯を叩きつけていた。 怖い女だなあ。
 「もうあんなのは寄せ付けないで。」 「あちらから飛んでくるんだから防げないよ。」
「あらあら、妻を守れないのね? あんたも変態じゃない。」 「そうじゃなくてだなあ、、、。」
「言い訳は要らないわよ。 ボケナス!」 今夜も大変だ 宥めとかないと明日が、、、。
そう思いながら風呂から上がったら二人して寝てしまったのでありました。 平和に過ぎて良かったわ。

 翌日、これまたいつも通りに仕事に出掛けているのですが、様子がちっと違います。
久しぶりに姉ちゃんを交番に連れてきました。 あんまりにも元気が無いんでね。
 と思ったら倉庫だった部屋に入って何かやってる。 (あの野郎、何をしてるんだ?)
覗こうとしたら「面会謝絶だからね。」って言ってきた。 ふーん。
 まったくもう、何をやってんだか、、、。 「中野通交番 どうぞ。」
「はいはいこちら中野通交番ですが、、、。」 「あっ居た。 オッケー。」
「何だそりゃ?」 最近は無線もまともに相手にはしてくれないですわ。
事件があまりにも無さ過ぎてねえ。 周りの町では毎日何処かで誰かが事件を起こしてるっていうのに。
 そうそう、最近ではねパトカーも走らないんですよ。 事件情報を打ち込むとドローンが犯人を追跡して百発百中で捕まえてくるの。
だから警官も30年前に比べたらずいぶんと減ったよ。 用無し種無し力無しのやつはまだ居るけど、、、。
ってもしかしてそれって俺のことか? いいもん もうすぐ退官なんだもん。
 10時になりますとここの二階からも巡回ドローンが飛び出していきます。 一回りして何も無ければそのまま帰ってきます。
3時にもう一回巡回に出ますですよ。 週末何かは夜中にも飛んでるらしいですなあ。
らしいですなって他人事。 ああいう精密機械には弱くてねえ。
 「姉ちゃんは?」 ふと倉庫を覗いてみたらお人形さんと遊んでた。 はーーーーーーーーあ、、、、。
何事も無く一日が終わって姉ちゃんを連れて帰ります。 麻理からは買い物を頼まれております。
いつものようにママチャリに荷物を載せて家まで帰りましょう。 30年 よく通ったなあ。
その前からだから40年になるのか。 よくやったもんだ。
姉ちゃんは黙って歩いております。 あの頃の勢いは有りません。
 ちょいと胸をツンツンしてみる。 「なあに?」
「あんまりにも静かすぎるから。」 「麻理さんに触らせてもらえばいいでしょう?」
「たまには姉ちゃんのを、、、。」 「しょうがないなあ。 ほら、、、。」
「道端でほらって言われても、、、。」 「じゃあ、どうすればいいのよ!」
「その調子その調子。」 「あっこら! 待てーーーーーー!」
 やっと姉ちゃんは本気を出してくれました。 やっぱ姉ちゃんはこうじゃないとねえ。
ってなんちゅう姉弟なんだよ? まったくもう、、、。

 追い掛けっこをしながら家まで帰ってきました。 「父さんたち 何やってんのさ?」
ちょうど帰ってきた和之も不思議そうな顔。 「運動会だよ。 運動会。」
「いいけど倒れないでね。 世話するの大変なんだから。」 「分かってるよ。 でもたまには姉ちゃんを怒らせないとさあ。」
「あたしを怒らせてただで済むと思うなよーーーーー!」 「その調子その調子。」
 俺は自転車に乗って家の周りをグルグル、、、。 姉ちゃんが見えなくなったなと思ったら、、、。
いきなり玄関から飛び出してきやがった。 「あぶねえだろう? 気を付けろよ。」
「あんたが怒らせるから悪いのよ。」 「どっちでもいいじゃん。」
「どっちでも悪いわよ。 ああ、こらーーーー!」 やっぱりこの姉弟は仲が悪かったのね?
 居間でゆっくりしていると麻理が帰ってきました。 「ただいまーーー。」
「お帰り。」 「あらあら、和之も帰ってきたの?」
「そうだよ。 母さんにさあ相談が有るんだ。」 「うん。 夕食作ったらゆっくり聞くわ。」
 そう言うと麻理は台所に立ちました。 和之はなんかソワソワしてますが、、、。
俺はというと暢気にYouTubeを見てます。 買い物も済ませたんだからのんびりしたくてさあ。