はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま熱愛中。

 世界に目をやるとさすがのロシアも中国も完全にメンツを潰されて虫の息になっている。 ハニトラも掛けられなくなってしょんぼりしてるんだってさ。
30年前はあっちでこっちでいいようにやらかしまくってたんだもんなあ。 しょうがねえよ。
 どちらも武器を取り上げられて政治権力も惨いくらいに剥奪された。 そうなるよな。
そしてさらにそれまで美味しい汁を吸いまくっていた連中は全て刑務所に放り込まれてしまった。 あの国家主席も大統領もだぜ。
反乱分子は悉く退治されて市場は完全に開放された。 もちろん彼らに協力していた外国人も同罪だった。
 日本から出ていった研究者も美容師も営業マンも日本に帰ることは無かった。 日本政府は帰らせようとしたんだけどアメリカがそれを許さなかったんだ。
厳しいけどそうなるよね。 再三にわたって帰るように促してきたのを無視して残ったんだから。
恨み事は地獄の底で言ってくれ。 なあ。

 家に帰ってくると和之が久しぶりに帰ってきた。 「おー、帰ってきたか。」
「九州を一蹴したから十日間の休みを貰ったんだ。」 「すごいなあ。 お父さんとはえらい違いだわ。」
「そりゃさあ職場が違うんだもん。 同じようなことは無いよ。」 「そうよねえ。 和之はドライバーなんだもんね。」
 「そうは言ってもぼくはただメーターを監視してるだけだよ。」 「そうかもしれないけどやっぱりすごいわよ。」
麻理は和之の前にコップを置いた。 苦心してブレンドした手作りのお茶なんだって。
 「母さんもよくやるなあ。」 「何が?」
「お茶なんてさあお湯を入れて出したらそれでいいじゃない。」 「何言ってるの? みんな味が違うんだから併せて飲みたいじゃない。」
「変な趣味。」 「いいじゃない。 年寄りの楽しみよ。」
そう言いながら麻理もお茶を飲む。 いい雰囲気だねえ。
 7時を過ぎると麻理は思い出したように台所に立った。 鼻歌を歌いながら夕食を作っている。
こういう時は下手に邪魔をしないほうがいい。 邪魔するととんでもない顔で激噴火するから。
 俺はYouTubeを開いた。 昔はパソコンから開いてたんだけど今は違うんだよなあ。
YouTubeレコーダーなる物が出てきて直接開けるんだ。 しかもチャンネルだって300個くらいは登録できるから直接見ることが出来る。
なんでもタブレットから派生して進化したんだって。 やるじゃないか。
 おかげで面倒な操作が要らなくなった。 昔はなあ、パソコンを開いて検索しながらYouTubeを掘り出してたんだからね。
登録するのもYouTubeにログインしなきゃ出来なかった。 それも今は簡単だ。
 登録ボタンを押せばチャンネルに登録されたことが発信されるんだ。 楽なもんだよ。
もちろん検索だって出来る。 トレンドワードから探すことも出来る。
 そこで今夜は鳥の囀りを聞くことにした。 ナイチンゲールらしい。
こんな鳥も居たんだなあ。 和之は、、、?
と思って見たらクッションを枕にして寝ちまってる。 麻理が起こすまでそっとしておこう。

 30年前、水着ショットとかキャミショットとかで世間を賑わせていた皆様はお元気ですか?
あの頃は毎日のように「美脚がすごい。」とか「お尻が可愛い。」とか「キャミと透け透けなのが色っぽい。」とか持て囃されてましたよねえ? きもかった。
ところがそれでも投稿は減らなかった。 それなもんだから警察庁は腹を立てて一斉取り締まりに動いた。
 xでもYouTubeでもインスタでもかなり強烈な規制をしてやっと少なくなってきたと思ったら、、、。
 ところがどうだろう? その後で性的加工がさんざんに問題にされたものだからキャミショットも水着ショットも投稿ngにされたよね。
今度は自分たちで立ち上げたサイトで投稿し拡散するようになった。 そこにはもちろん無修正の動画や写真も入っている。
赤ちゃんたちの未来予想図までAIで作るようになってしまった。 作られた方は堪ったもんじゃない。
 全国全世界で損賠訴訟が立て続けに起こされて大騒ぎになってしまった。
しかも標的にされたのはサイトだけじゃない。 これまでに水着やキャミなど性的と見られても仕方のない写真を投稿してきた有名人にまで広がった。
 しかも一人当たり2億円とかいう破格の損賠請求だから自己破産と自殺が急増した。
そう、30年前に騒がれていたあの人たちがみんな標的にされて狙われたんだ。 えげつないことをするもんだよなあ。
 でもそれはやられても仕方が無いと思う。 性的加工に材料を惜しみなく注ぎ込んだんだから。
あの頃、メンバーズコミュニティーとか写真集とか作ってたあの人だって訴訟からは逃げられなかった。
 それだけの大騒ぎを呼んだものだから政府も考えに考えて性的だと見られやすい画像の投稿は一切禁止するように法律を作らざるを得なかった。
各新党に移った時には「そもそもの原因は女性の画像なんだから女性の投稿を全面的に禁止しよう。」なんて極論も出てきたくらいだ。
それだけ恥を知らない女が空気を乱してきたってことだよ。 アスリートの性的撮影が問題になった時、何でこいつらの撮影は問題にならなかったんだろう?
 現に卒アルまで大変な問題を投げ飛ばしたじゃないか。 それだけ性的加工はえげつない所にまで進化してたってことさ。
 単なる普通の水着ショットであっても加工次第ではどうにでも出来る。 しかも継ぎ目が無いから加工されても分からない。
電子顕微鏡で覗いても分からないだろうなあ。 本人の顔だけ使えればいいんだから。
 体のサイズは何とでも出来る。 微妙に調整しておけば分からない。
有名人がそれなんだから一般庶民はものすごいことになってるよ。
 それをさあ「きれいだから」とか「スタイルがいいから」とか言って不用心に投稿するわけだろう?
加工したい人間からすれば機会さえ持っていれば材料は山ほど手に入るわけだ。 しかも金が掛からない。
丸儲けだね。 そんなことをこれまで見過ごしてきたわけだよ。 情けない。
 おかげで今はネットものんびりと散策できるようになった。 法律が出来るまでは「違反投稿を見付けたら報告してくれ。」って本部もうるさかったんだからな。
それくらいに秩序が壊れていたってことだ。 それでいながら「現代人は進化し続けている。」なんて偉そうな顔で言うんだもんなあ。
進化し続けてるんなら山を作ってみろよ。 海を作ってみろよ。
やれるか? 作れるか? どうだ?
 ほんとになあ、江戸時代の人たちが見たら唖然として死んじまうだろうなあ。 こんな情けない世の中になってたのか?って。
それくらいに30年前の日本はおかしすぎたんだ。 政界からして狂いまくってた。
利権にしか興味が無い自民党と騒ぐことしか興味が無い野党ってな。 それなもんだから国民がブチ切れたんだ。
そして衆議院も参議院も投票率10パーなんて選挙が続いて議員の総入れ替えが起こった。 さらに国と地方の関係も見直されたんだ。
それが今に至ってるわけだな。 ここまで来るのに10年掛かったんだ。
長かったねえ。

 「さあ出来たわよ。」 麻理が俺のほうを向いた。
「よしよし。」 テーブルをきれいにして夕食の準備を、、、。 「和之、そろそろ起きなさい。」
「んんんんんんん、、、。」 そしてやっとあのお姉様も二階から下りてきた。
 麻理は何も言わずに箸だけを渡す。 瞬間、姉ちゃんの顔が、、、。