宿からの帰り支度を整え、それぞれにリュックやボストンバックをかけた時、アルが目だけを真輝へやった。
「よくわかったね、真輝ちゃん。あんな、ある意味強力で、ある意味半端すぎる能力……」
「ああ、明確に定義付けできんものを理解するのは難しいからな。どうして『気付けた』?」
一ツ橋が受付をやっている玄関をあとに、真輝はただ、ふん、と鼻を鳴らす。
「別に、特別なことではないわ。ただね、私にも、私でありながら私ではなく、私ではないながら私に間違いないだれかが巣食っている。それと、同じことよ」
「『自分の声が自分のものではないと気付けるか』……か。まったくもって、難しすぎるだろうよ、そいつは。ところで、じゃあなんでアイツは最後自分まで自殺したのかは、わかるか」
「さあ。それも自己暗示だったかもしれないわね。『気付いてくれないなら死ね、気付いてもらえたら。もう私は死んでもいい』」
「救われんな」
「そうね」
「東城さんには僕がいるじゃない」
割り込んで来た風間純の言葉を、真輝はぷいと顔を背けて無視したのだった。
「よくわかったね、真輝ちゃん。あんな、ある意味強力で、ある意味半端すぎる能力……」
「ああ、明確に定義付けできんものを理解するのは難しいからな。どうして『気付けた』?」
一ツ橋が受付をやっている玄関をあとに、真輝はただ、ふん、と鼻を鳴らす。
「別に、特別なことではないわ。ただね、私にも、私でありながら私ではなく、私ではないながら私に間違いないだれかが巣食っている。それと、同じことよ」
「『自分の声が自分のものではないと気付けるか』……か。まったくもって、難しすぎるだろうよ、そいつは。ところで、じゃあなんでアイツは最後自分まで自殺したのかは、わかるか」
「さあ。それも自己暗示だったかもしれないわね。『気付いてくれないなら死ね、気付いてもらえたら。もう私は死んでもいい』」
「救われんな」
「そうね」
「東城さんには僕がいるじゃない」
割り込んで来た風間純の言葉を、真輝はぷいと顔を背けて無視したのだった。

