+湯けむり連続自殺事件

上江は立ち上がる。

「ここへ来たのは、さきほど話された霊を探しに来たのです。が、私は言いました。本当に霊がいたとして、気付くことができるのですかと。そうしたら、ヤツらは言っていたのですよ。『絶対に気付いてみせる』と」

誰も、なにも言わない。

上江のそれはなかば嘲笑であり、もうなかばは自虐だった。

「気付くと、ヤツらは気付くと言っていたのです。ならば気付いてみせろと私は思いました。そこまで自負するのならば、私にも気付いてみせろと」

「それで、テレパシーを送ったか」

仁のタバコの煙が、しらしらと蛍光灯の傘に溜まっていた。

上江はもう隠さない。いや、隠したくないのかもしれない。

『気付いて』もらえたから。

「ええ。ですが、結局だれひとりとして気付くことはなかったのです。自ら言ったことを守れない者など死んでしまえと思いました」

「そう。……間違いではないけれど、間違いよ」

と真輝は溜め息のようなものを吐いた。