「あの凄絶な自殺の仕方も、それで合点がいきますね」
と楓のメガネが上江を捉える。
「自分が死ななければならないと思い込めば、あれだけ思いきった自殺もできるでしょう。テレパシーの影響で自己暗示がかけられてるんですから、それを実行する意思はあまりに強いです。
最初に野々村さんがあまりにも早く死に至ったのは、すでに存在意識のほうから死亡していたから、ですね。意識が死亡した人間なら、存在の公式がポックリと潰えますから」
「そういうことよ」
上江は黙ったままだが、なぜか、どこか満足気だった。
真輝が締めとばかりに言う。
「つまり上江、アナタは声を四人へ送った。送ったところで、それが『上江の声』であることに『気付く』はずもないのに、送った。そして当然のように自分の声を自分のものだと思って疑わなかった四人へ、『気付かなかった』四人へさらに、テレパシーを送った。死ね、とね」
方法の解明が、同時に、動機の解明にも及んでいた。
一同の視線を受ける上江は……
「アナタに……」
「……」
「アナタに気付いてもらえて、よかった」
四人を自殺させたとは思えない、綺麗な笑みだった。

