みなは、宿の外に集まっていた。
いったい何事かを真輝が訊ねると、桜庭が顎で差す。
「はははっ、いっそ清々しい光景だと思うなあ」
という感想を聞きながら見た先、宿の屋根に、いったいどうやって登ったのか、やはりあのメンバーのひとり、野々村の恋人である浅野がいた。
全身、なにやらびしょ濡れである。
鼻をつく、妙な臭いが漂っていた。
「ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい!!」
と、彼女は喚き散らしながら、右手を前へ突き出した。
握っているのは、ジッポ式のライター。
真輝は漂っている臭いがガソリンのものだと感得した。
「やめろー!」「はやまるなー!」「自殺なんてよくないわー!」
と、見上げることしかできないほかの宿泊客が決まり文句のように叫ぶ。
その中には上江もいたが、彼女は冷たい目で浅野を見ていた。
「ごめんなさい! 許してください、ごめんなさい!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
ガタガタと震えながらの謝罪はいっそ、イカれた計器がぐるぐると針を空回りさせる様にも似ていた。
狂気に犯され叫ぶ右手が、シュボ、とライターを点火する。
いったい何事かを真輝が訊ねると、桜庭が顎で差す。
「はははっ、いっそ清々しい光景だと思うなあ」
という感想を聞きながら見た先、宿の屋根に、いったいどうやって登ったのか、やはりあのメンバーのひとり、野々村の恋人である浅野がいた。
全身、なにやらびしょ濡れである。
鼻をつく、妙な臭いが漂っていた。
「ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい!!」
と、彼女は喚き散らしながら、右手を前へ突き出した。
握っているのは、ジッポ式のライター。
真輝は漂っている臭いがガソリンのものだと感得した。
「やめろー!」「はやまるなー!」「自殺なんてよくないわー!」
と、見上げることしかできないほかの宿泊客が決まり文句のように叫ぶ。
その中には上江もいたが、彼女は冷たい目で浅野を見ていた。
「ごめんなさい! 許してください、ごめんなさい!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
ガタガタと震えながらの謝罪はいっそ、イカれた計器がぐるぐると針を空回りさせる様にも似ていた。
狂気に犯され叫ぶ右手が、シュボ、とライターを点火する。

