+湯けむり連続自殺事件





真輝が目を覚ますと、宿は騒然としていた。

廊下をほかの宿泊者、中居などがバタバタと走り回り、騒いでいる。

その騒動で、アルや仁、ほかの者らも起きてしまっている。

すでに脱け殻の布団もいくつか。

「おぅ、起きたか真輝」

と、待っていたらしい仁がタバコをくわえている。

その浴衣が乱れに乱れきった着流し常態なのは、なまめかしい――というより、もはやだらしない。

「なんの騒ぎなの」

日頃からひとえを寝間着にしている真輝に、着乱れは見られない。

そう簡単に肌を露出はしない、お堅いのである。

髪を結った香澄が、メガネをかけた楓が、パタパタと出ていく。

なにかが起きた――つまり――

「第四の自殺ね」

「ああ、今まさに」

「ごめんなさああああ――ああああああいっっっ!!」

「自殺しようってとこらしい」

口角を片方だけ吊りあげた仁に、真輝はうなずく。

急いで廊下へ出、騒ぎながら移動する人波に添う。