+湯けむり連続自殺事件

ごそりとポケットをまさぐった仁がタバコを取り出す。

「真輝、こっちも説明してやれ」

「言われるまでもないわ」

火をつける仁の横で真輝。

「アナタ達三人が山へ行っている間に三人目の自殺者が出た。死んだのあの金髪。死に方は、アルから聞いたでしょう。それで、彼らの部屋は廊下の一番奥になるのだけど、そこへ至るまでの廊下をだれかが歩いた気配はないわ。無論、霊も。ということは、あの部屋にいるだれかが、彼に影響を及ぼした」

「宿の外やほかの部屋からの暗示とか、テレパシーとか、そういう可能性はないんだね?」

「ないわ」

桜庭の疑問を、真輝は一蹴。

「仮に行われたとして、これほどの人外や超常に気付かれず、あの部屋の一人へ影響するのは至難の技だわ」

一二三が継ぐ。

「一二三の一点意思照射ですら、多少、目的点とは違うところへ余波が飛ぶ。魔法魔術ならば特定者への影響が可能――だが」

「魔法魔術の発動した感覚はない。結界で気配を封じてから魔法魔術を行っているとしても、結界の気配すらない。だろ?」

仁の確認に、香澄がうなずく。