「まず私たちのほうから報告します」

と、楓。

「裏山にはたしかに霊がいました。ただ、彼らを呪う力はありませんし、呪う理由もやはりないです。また、その霊に聞いたのですが、この宿に自殺を強要している何者かがいるようです」

「暗示などですか、やっぱり」

香澄の相づち。

楓は続けた。

「霊の存在は、自分に気付いてほしいというものでした。この宿で自殺を強要している者の念も、同様のようです。気付いてほしいと。ただ、どうやら気付いてもらえないようで、それなら死んでしまえ、と念を上塗りしているようですね」

「テレパシーの一種か」

と、仁。

「しかしテレパシーだとして妙だな。受信にせよ送信にせよ、気付かれないというのはなんだ。相手に死んでしまえと強要できるほどのテレパシーならば、だれしもが気付くはずだ。頭の中で声がする、という『気付き』になる」