+湯けむり連続自殺事件

問い詰めても、恐らく三人を追い詰めてしまうだけだろう。

無理解な自殺に悩み、苦しみ、今後アルの事情聴取で支障を来してはいけない。

「はい、わっかりました」

と、幹が締めた。

「お二人は霊に自殺を強要させられた……とにかく、その路線が強いってこと、アルさんに伝えときますよ」

「お願いします……」

力を抜くように頭を下げた浅野を、賢一はただ憐れだと思った。

本当に、ここの三人は霊の仕業だと信じているのだから。

部屋を出た三人は、それぞれに顔を見合わす。

「どう思う、一二三さん、幹」

「どうもなにもねぇ……、霊かぁ……」

歩きながらの会話。

「たしかに霊なら、自殺の現場には死亡者ひとりだけど……アルさんの蝙蝠が、この近辺には獣すらいないほど平和だって言ってたよ。それに、呪われる理由がないなら、霊が出てくるのおかしいし」

「そればかりではない」

と一二三。

「霊がいたならば、母上が見逃すはずがない。人を自殺に貶めるほどの暗示をかける霊ならば、存在を見抜けないはずがない。鬼は地獄の住人。それが死者を見逃すなどありえない」