「アイツが反応したっつぅこた、なにかあるってことだろ。ったく、いいのかぁ? フジオカ少年を不思議描写しちまって。まだ『鬼の心理』は連載中だろうが」

「あーあー仁、そういう発言はダメだよ、口チャック口チャック」

「なにを言い合ってるのよ」

真輝のいぶかしいだ目が、光る。

その目玉がきょろりと動いて次に捉えたのは、部屋の壁にかかっている柱時計だった。

おかしなデザインで、真っ黒い刃、真っ黒い柄、真っ黒い鍔の剣が針になっていた。

まもなく、その針が重なろうとしている。

「仁、下準備はできてる?」

「ああ、抜かりはない。さすがにオカルト同好会なんてのがいる状況だ、目立つ式は組めんが、陣は敷いてある。なあアル?」

「うん、大丈夫だよ真輝ちゃん。仁の式を蝙蝠に付随して拡散させたからね。本当、抜かりはないよ」

「そう、なら」

とまでうなずいた時、むくりと、純が起き上がった。

寝ぼけた面ではなく、やけに醒めた顔が、どこかへ――フロントのほうへ、向く。

「始まる」

と、取り憑かれたような口調が呟いた時――

地獄の入り口を開いたような叫喚が、轟いた。