「まあ、カップラーメンはさておいて。彼がひとりになったのは、ほんの数分らしい。太田くん、浅野さん。上江さん、柴尾くんの四人が、フロントそばの自販機へ飲み物を買いにいって、彼はひとり部屋で待っていた。いわゆる荷物番かな。で、四人が戻った時には野々村くんは首を吊り、もう死んでいた」

「時間が合わないな。数分なら、すぐさま下ろしてやれば助かるだろう。なら、死にはせんだろ」

仁に続いて、幹が口を開く。

「そもそも、そのロープはどこにあったのかな? というより、梁にロープを通すだけの時間があるかも疑問だね」

「そうね……ということは、彼の自殺が不確定なものになるわ。仮に自殺だとして、ただの自殺とは言えない」

真輝の言葉で、アルがパタン、と手帳を閉じた。

「そうだから、これはただの自殺じゃない。かといって、他殺の要素はどこにもない。彼はなぜそんな短時間で死ねたか、なぜ自殺をしたか……様々な疑問が残るのさ」

「……する? 調査を」

倒置法で、香澄が訊ねる。

が、だれが答えるよりも早く――

「待とう」

風間純が、言った。

「今日の深夜まで、待とう」

その時、次の事件が起こると、運命付けられる。

真輝は思った。

ああ、深夜にまたひとり、だれか『自殺』するのか……と。