+湯けむり連続自殺事件

賢一が苦笑か、失笑をする。

「なんだか、迷惑な話だね、それ……。アルさんも大変ですね」

「大変だよ、うん。特に大変なのは、この自殺が自殺じゃないかもしれないっていう要素が、彼らの主張以外にもあるっていうことだよ」

「……自殺ではない、可能性?」

一二三の言葉は、真輝が言おうとしていたのと同じだった。

アルはこくり、うなずく。

「この部屋とあの部屋は、同じ作りなんだ。向こうも大部屋、ここも大部屋。まあ、この旅館はどの部屋もみんな広いらしい。そして、どの部屋もみんな同じ作りなんだ。で、ちょっと上を見て」

一同の顔が、上がる。

仁が呟いた。

「高いな、あの梁」

「そう。彼がいくらラガーマンで肉体派でも、ここの梁に届くかはわからない。まあ届くとして、そこにロープをかけ、首を吊るにはそれなりの時間がかかるだろうし、人間は窒息死するのに三分かかるんだよ」

「ははっ、カップラーメン並だね」

桜庭が笑った。彼にとって人間はある意味、カップラーメン以下であるが。