アルはまず人払いにかかる。

「ここは僕に任せて、無関係な人はお部屋にお引き取りくださーい。さあさ、帰って帰って」

「アル、俺らは」

踏み出そうとした仁に、アルは掌を向ける。制止の指示。

「仁、それからみんなは、先に部屋に戻っていて。警察にはどのみち通報するから、現場をできるだけ維持したい」

「わかったわ。行くわよ、仁。ほら全員、まずは戻るのよ」

真輝が促し、現場にはアルと、この自殺者の友人四人が残される。

一ツ橋は警察に電話しておくと言って消えた。

楓も特別動いていない。どうやら、教会は介入しないらしい。

遺体はすでに下ろした。今は布団に寝かせてある。顔に白い布をかけて。

アルは、友人を亡くし、意気消沈している面々に向いた。

「さあて……事情聴取をしたいんだけど、いいかな?」

そこに浮かぶのは、穏やかな、余裕に満ちた微笑み。

事件の夜が始まった。