桜の舞う夜、彼らは


「悪い、俺は用事があるから、優弥と一緒にいてくれ」

「わかった。気をつけてね」

「ああ」

 そう言って伊織はバイクに跨って、どこかへ走っていった。

「じゃあ俺達は一旦安全な場所に移動しよっか! さっきも言ったけど傷の手当もさせてね」

 ニコニコと優弥が笑みを浮かべながら言う。

 ……伊織と知り合いなら悪い人ではないだろう。不良たちから逃げてきたせいで帰り道もわからないし……。

「じゃあ、お願いします」

「うん! ……で、本当は俺のバイクに乗せてあげたいんだけど、二人乗り用のバイクじゃないから、知り合い呼んだんだ。そろそろ来ると思うんだけど……あ! きた!」

 優弥が指さした方を見ると、一台のバイクがこちらに近づいてきていた。
 そして、目の前に止まって、バイクに乗っていた人がヘルメットを取る。

「よっ、優弥。……と、はじめまして! 俺は篠崎(しのざき) 海斗(かいと)。よろしくな!」

 ニッと人懐っこい笑みを浮かべる海斗さん。
 整った顔をしてる。伊織より少し年上……かな。

「はじめまして、滝野 鈴です。伊織の幼馴染です。……よろしくお願いします」

「へぇ〜、伊織と結構長いこといるけど、幼馴染いるなんて初耳! 付き合ってんの?」

「付き合ってません」

 ここだけは即答させてもらう。
 変な誤解を生んで伊織とギクシャクしたくないし。

 へぇ、と海斗さんが面白そうに笑った。

「色々聞きたいことはあるけど、とりあえず移動しよっか」

 優弥がそう言ったので、バイクに乗ろうと思ったけど……。

(高いなぁ……)

 一人じゃ乗れなさそうだ。