桜の舞う夜、彼らは


「……い、おり?」

「ああ」

 この男――亜豆馬(あずま) 伊織(いおり)は、私を安心させるかのように、優しく微笑んだ。

 伊織は、私の幼馴染(おさななじみ)だ。
 幼稚園児の時から一緒にいて、一旦中学が別れたあと高校で再会した。……と言っても私も伊織もたくさん喋る方じゃないから、必要以上のことは学校で話さないけど。

「……よかった、見つかって」

 ホッとした表情を見せる伊織。
 いつもはこんな表情を見せないから、少し戸惑う。

「ありがとう」

「ああ」

 とりあえずお礼を言って、ペコリと小さくお辞儀する。

「……というか、桜華組だったんだね」

「まず言ってなかったしな。二年前に入って今幹部やってる」

「リーダーじゃないの?」

「ああ。今日はたまたま幹部が全員集まってて見回りしてたら、変な輩見つけて追ってたんだ。……まあ、まさか鈴と会うなんて思ってなかったが」

 伊織の言葉に、私も苦笑いした。

「ねぇねぇっ!」

 そんな時、伊織の後ろからひょこっと小柄な男の子が顔を出した。

「伊織と君ってどんな関係なの!? いつも戦うの面倒くさがる伊織が先制攻撃(せんせいこうげき)するなんて……明日は雪かなぁ?」

 ニコニコと可愛らしい笑顔で、中々失礼なことを言う。
 私は一旦姿勢を正して、念の為敬語で話す。

「……はじめまして、私は滝野(たきの) (りん)って言います。伊織とは幼馴染です」

「そうなんだ〜! あ、俺は矢月(やづき) 優弥(ゆうや)! 優弥でいいよっ。よろしくね!」

「よろしくお願いします」