桜の舞う夜、彼らは


「……っ!」

 怖くて、うまく息を吸えない。落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせる。

(早く、逃げないと……!)

 ヴォォンッ!!!

 そう思った時、別のバイクの音が聞こえた。
 音がした方を向くと、五台ほどのバイクがこちらに向ってきて、目の前で止まった。

(――桜華組、だ)

 直感だけど、そう思った。

「……見つけた」

 淡々(たんたん)とした口調で、バイクの真ん中にいた男が言った。
 街灯が多い道とはいえ、少し暗くて顔が見えない。

「近づくなよ? この女がどうなってもいいならな!

 私を捕まえている男が気持ち悪い笑みを浮かべながら、私の頬に刃先をすべらせた。

「いっ……!」

 私は小さく声を上げた。
 もうダメだ、と血の気が引いた瞬間――。

 ドカッ!

「ぐあっ!」

 私を捕まえていた男が、桜華組の中央にいた人に鳩尾(みぞおち)を蹴られていた。

「――失せろよ」

 低く、威圧感(いあつかん)のある声で、冷たく言い放つ。
 男が気絶して、桜華組の人は他のメンバーに「後処理」と一言。

 そして、私の方へ来て……暗くて見えなかった顔が、あらわになる。

「大丈夫か? (りん)

 震え上がるほどの殺気を出していた男が、心配そうに眉を下げる。

(え……!?)