桜の舞う夜、彼らは


「はい。小学生からやってて、中学生で黒帯になりました」

「すごぉ……!」

 優弥が驚いた声を上げる。
 伊織はまだ厳しい顔のままだ。

「――今、”蹴られた(・・・・)”ってどういうことだ」

 ピリッと、空気が凍る。
 ちょっと低い声。流石に威圧感があって怖い。

「そのままだよ」

「どこを蹴られた?」

「避けたから大丈夫」

 まぁ、嘘だけど……。
 変な心配はかけたくない。別に、少し痛むくらいだし。

 まだ納得いかなそうな顔をした伊織だけど、「大丈夫」を連呼(れんこ)したら何も言わなくなった。

 心配してくれる伊織には申し訳ないと思う。多分毎回(・・)、私が嘘をついているのを分かって黙ってくれてる。

(ごめん。……ごめん)

 心の中で、謝罪の言葉を繰り返す。

 ……チリチリと、罪悪感に胸が痛んだ。

「ほらよ」

 私は暗くなった気持ちをごまかすように、目の前に置かれたレモンティーを(すす)った。