桜の舞う夜、彼らは


 後ろに男がついてきていないことを確認して、『Ruo』に入る。

 カランカラン……

「いらっしゃ――って、お前か」

「っ理希さん、こんにちは」

 安心して、ふっと肩の力が抜けた。

「あ! 鈴来た! やっほ~!」

「……」

「見たらわかるだろ」

『Ruo』には優弥、静弥、伊織もいて、それぞれ座ってくつろいでいた。

「みなさん、こんにちは」

 軽く挨拶をして、定位置と化しているカウンターの端の席……伊織のとなりへ座る。

「なんか飲むか」

 理希さんが、洗い物をしながら私に聞く。

「いえ、大丈夫で――」

「鈴、レモンティー好きだったろ。メニューにあるけどいいのか」

 断ろうとしたら、伊織がニッと笑って私を見た。

(レモンティー……!)

 自分の瞳が、キラキラと輝いていくのがわかった。

「じゃ、じゃあレモンティーでお願いしますっ」

 「わかった」と、理希さんは冷蔵庫の方へと歩いていった。
 私は伊織の方を向いて、お礼を言おうとした時。急に伊織の目が鋭くなった。

「……鈴、その手首どうした」

 え、と自分の手首を見る。
 すると、さっき男に掴まれていた手首が、くっきり赤くなっていた。

「触ってもいいか」

「い、いいですけど」