桜の舞う夜、彼らは


 すぐ近くで、ブレーキを踏んだ音が聞こえた

「クソッ!! 桜華組(・・・)に見つかるなんて……ッ!」

「これからどうする? あと少しで追いつかれるぜ?」

 桜華組――。
 四・五年前、暴走族を撲滅(ぼくめつ)するために生まれた、世直しグループのことだ。

 警察と協力していて、主に治安の悪い町で活動している。

 そんな桜華組が近くにいるという事にホッとしたのもつかの間、会話をしている男たちと私の距離は凄く近い。私が道の角から顔を出したらすぐに見つかる。

(ここから離れたほうがいい、よね)

 ゆっくり、ゆっくり、音をたてないように後ずさる。
 だけど……。

 ガサッ!!

「っ!」

 さっき買ったものを入れた袋が、大きな音をたてた。

「?、なんだぁ?」

「っおい、女がいる!」

 ヤバい、見つかった。
 すぐに立ち上がって走り出そうとしたが、そう簡単にいくはずもない。

 腕を掴まれて、引き寄せられる。

「こいつ人質にすれば、逃げれるんじゃね?」

「ラッキー!」

 ニヤニヤと、嫌な笑みを浮かべる男たち。
 この時点では、別に怖くなかった。中学の部活でやっていた柔道技で倒せると思ったから。

 ……でも、男たちが持っているある物(・・・)に気がついてしまった。

「動くなよ? 死にたくないならな」

(ナイフ……!)

 これから、何をされるんだろう。