桜の舞う夜、彼らは


 ――私の体が、硬直した。

「よぉ、この前ぶりだなぁ」

 ニヤリ、と気持ち悪い笑みを浮かべる彼。

「……っ!」

「お前、桜華組に助けられてたやつだよな?」

 彼は、桜華組と出会った時、私にナイフを突きつけてきた男だ。
 ニヤニヤと笑みを絶やさず、私の手首を強い力で掴んできた。

「ちょっと付き合えよ」

 痛い。怖い――。

 ぶるっと肩が恐怖に震えた。
 体の震えに気づかれないように、キッと男を睨む。

「……私に、なんの用ですか」

「あ゙ぁ? お前のせいで俺と他の奴らはボコボコにされたんだぜ? やられたらやり返すのが常識だろ」

 まず、貴方達が私を巻き込んだんじゃないですか。
 思わず思ったことが口に出そうになって、ぐっと押し黙る。

 一旦、冷静になる。

(……どうしよう)

 今、桜華組のメンバーはいない。
 けど、ここは『Ruo』の近く。何か騒ぎがあったら気がつくはず。

 ……逃げる策がないわけじゃない、けど。

(これ、絶対何処かは怪我する(・・・・)んだよなぁ)

 今はそれしかないか。
 私はふーっと息を吐いてから、その策とやらを実行した。