桜の舞う夜、彼らは


「あの伊織だしなー! あいつ人嫌いだろ? 特に女子!!」

海斗さんがケラケラと笑う。
確かに、人が嫌いな伊織が信じたこの人たちを……私も、信じたい。

「――何笑ってんだよ」

和やかな空気になった時、聞き慣れた声がした。

「伊織」

私が名前を呼ぶと、伊織はこっちを向いて優しく微笑んだ。

「俺もいるよ~!!」

「……どうも」

伊織の後ろから、ひょこっと優弥が顔を出す。
優弥の隣には、ソックリな顔をした男の子がいる。さっき言ってた弟さんかな?

双子のようだけど、優弥の髪の毛は茶色。隣の男の子は青みがかった黒だから、区別しやすい。

「静弥、この子が鈴だよ!」

「……そぅ」

静弥さんは私をちらっと見て、お店のテーブル席に座った。

「!?」

静弥さんが座った席を見ると、隣にもう一人、本を読んでいる男の人がいた。

(全然気づかなかった……!)

一人びっくりしていると、亜希さんが「よし!」と手を叩く。

「幹部も全員揃ったし、改めて自己紹介しようか。
 ――俺は小宮(こみや) 亜希(あき)。桜華組のリーダーで、今年二十歳になりました。よろしく」

ふわふわした、明るい茶色の髪の毛を揺らして、微笑む亜希さん。
そして、「次は蓮ね」と、静弥さんの隣りにいる男の人に声をかけた。男の人は本を閉じて、私と目を合わせる。

神楽(かぐら) (れん)です。桜華組の副リーダーで、主に医療(いりょう)担当をしています。……あ、年は十九です。よろしくお願いしますね、鈴さん」