桜の舞う夜、彼らは


 私は(しばら)くボーっとしていた。

 そして、数十分ほど経った時。

 ガチャッ!

 お店の玄関が開いて、そちらに目を向ける。
 するとそこには、ふわふわの、明るい茶色の髪の毛に、優しそうな目元。恋愛漫画で言う王子様キャラの男の人が、入ってきた。

「お疲れ様でーすっ! 亜希さん(・・・・)

 海斗さんが姿勢を正して敬礼のポーズをする。
 ”亜希さん”と呼ばれたその人は、「ありがとう」と微笑む。そして、私を見て、もう一度微笑んだ。

「君が、鈴ちゃん?」

「……はい」

 確か、伊織はこの”亜希さん”に呼ばれたんじゃなかったっけ。

(それとも、別の人なのかな?)

 そう思っていると、亜希さんが口を開いた。

「怖かったでしょ? 怪我させちゃってごめんね」

 眉を下げて、本当に申し訳無さそうに謝る亜希さん。
 きっと桜華組の人なのだろう。私は慌てて否定する。

「いえ、元はといえば夜中に出かけた私の自業自得(じごうじとく)です。こちらこそ、ご迷惑おかけしてすみませんでした」

 そう言って頭を下げると、理希さん、海斗さん、亜希さんの三人がきょとん、とした。
 そして、亜希さんは「ありがとう」と言って、私のとなりに座った。

「俺は小宮(こみや) 亜希(あき)。桜華組のリーダーをしてる。よろしくね」

 キラキラのエフェクトを付けたくなるような完璧な笑顔。
 イケメンって、こういう人のこと言うんだろうなぁ……。

「滝野 鈴です。よろしくお願いします」

「うん。……ところで、鈴ちゃんは桜華組のこと、どのくらい知ってる?」

「え?」