桜の舞う夜、彼らは



 ヴォンヴォォン!!


 ……耳障りなバイク音が、遠くから聞こえる。

(なんで今日、暴走(ぼうそう)してるんだろ……めんどくさい)

 私ははぁ、とため息をつく。
 夜、無性にジュースが飲みたくなって近くのコンビニで飲み物を買っていたら、急にバイク音が聞こえてきた。

 私が住んでいる街には暴走族がいる。

 ここらへんで週末とかに夜中、バイク音が聞こえてくるのは普通のことだけど、なんで週末じゃない今日、バイクの音がしてるんだろうか。

(なるべく明るい道を通らないとなぁ……)

 そうでもしないと変な(やから)に襲おそわれる。
 私はコンビニを出て、街灯の多い道を選んで歩いた。

 ……だけど、段々バイクの音が近づいてくる気がする。

 普段、この道は通らないはずなのに。

 こんな事は今まで一度もなかったから、流石にヤバいと思った。
 とりあえず、ここから離れなくちゃ、と走り出す。


(――音が、近い)

 冷や汗が、頬に伝った。

 はっ、はっ、と息が切れる。
 いっそのこと、逃げるんじゃなくて隠れたほうがいいのかな。なんて思った瞬間。

 ヴォンッ!

「……っ!」

 本当に、すぐに近くで音がした。
 とりあえず道の曲がり角に隠れて、息を潜めた。

 ドクドクと、心臓の音がうるさい。