花集 春


風に吹かれて桜は攫う
儚くも残酷な薄桃の花びら
無邪気な風を装って
僕の前で最愛の彼女を連れ去った

風に吹かれて桜は散る
彼女を連れ去った薄桃の花びら
僕に消えぬ傷を植え付けて
今日もまた彼女を連れ去った場所で咲き続ける

風に吹かれる桜が嫌い
僕から彼女を奪った薄桃の花びら
桜は嫌いになったけれど
彼女を守れなかった僕自身が一番嫌い