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最悪だ。
席に着くや否や、案の定今朝のことでクラスの女子から質問攻めにあった。

「田嶋さんって、璃央先輩の彼女ってほんと?」

「いや、璃央はうちの兄の友達で・・・」

「じゃあ、幼なじみなんだ。羨ましい~!」

「まぁ」

すっかり取り囲まれたわたしは、まるで囲いの中の小動物。
教室の窓から差し込む朝の光も、そのときばかりは暑苦しく感じる。

そういえば、中1のときもお兄と璃央と一緒に登校したら、こんな騒ぎになったっけ。
女子たちの黄色い声に、どこかくすぐったいような、面倒くさいような気持ちになりながら、記憶の奥に沈んだ懐かしい情景が浮かんでくる。

のらりくらりとかわしていると、わたしの机の周りを囲む女子たちの肩越しに、ひとりだけじっと立っている影が目に入った。

金髪の男の子。

「あっ、席ここ?」

わたしの前の席を指すと彼は、小さくこくりと頷いた。

囲んでいた女子たちもそれに気づき席から離れる。

金髪の彼は静かに椅子を引いて座り、
わたしが「ごめんね」と声をかけると、少しだけこちらを向いて血色のいい唇が「うん」と動いた。

リップ塗ってるのかな?
てか、どこかで見たことあるような・・・。

記憶を遡ろうとしたところ「それで、璃央先輩って・・・」と再び質問地獄が始まり、
それは先生が来るまで続いた。