ーーそう決意して迎えた翌朝。

優愛の家の前で、彼女が出てくるのを待った。

扉が開き、優愛と目が合う。
一瞬固まった後、いつも通りの笑顔を見せた。

「おはよう」

「・・・おはよう」

沈黙が落ちる。
心臓の音がうるさくて、仕方がない。

「優愛、昨日のことなんだけど・・・」

「そうそう!昨日あの後、みんなで焼き肉屋さん行ったんだけどそこの牛タンがすごい美味しくて。
今度は璃央も一緒に行こうね。美味しすぎて感動すると思う」

「あっ、あぁ。それで昨日の・・・」

「あぁー!今日、日直なの忘れてた!
ごめん璃央、先行くね」

「ちょっ、優愛・・・!」

走り去る背中を追うことしかできなかった。

やっぱ、そうなるよな。

その後も、廊下ですれ違えばそっぽを向かれ、昼休みには逃げられた。

想定内の反応だけど、実際にやられるとちょっとキツイ。

下校時間、優愛を教室まで迎えに行くつもりだったのに、
思ったよりHRが長引いてしまい、急いで靴箱に向かう。

もう帰ったか。

「璃央先輩?」

振り向くと真弓ちゃんと望の姿があった。
いつも3人で帰っているはずなのに優愛の姿はない。

「2人とも。今日、優愛は?」

「なんか、先に帰ってって言われましたけど」

「そっか、ありがとう」

まだ、学校にいる。
俺はまた走った。

優愛を探す間、今更好きだなんて言って許してもらえるんだろうか。
いっその事なかったことにした方がいいんじゃないかなんて考えが何度も頭をよぎった。

長年沁みついた臆病さと逃げ腰はなかなか治らないらしい。

でも、だからこそ今日言わないとダメな気がした。
そんな焦りが走るスピードを加速させる。

そして、ようやく優愛を見つけた。

ちょうど化学準備室に入っていくところだった。

久々に来たな、ここ。

人があまり来ないこの教室は、俺みたいなクズには都合のいい場所だった。
ここで綾香とキスしてるところも優愛に見られたんだっけ。

そんな最低な記憶がよみがえり、一瞬教室に入るのをためらってしまう。

一度深呼吸して、俺はドアを開けた。