憂鬱と怒りを感じながら、制服に着替えてリビングに向かうと、
テーブルにはトースト、サラダ、目玉焼きが2人分用意されている。

璃央は我が家かのように、自分の分のコーヒーとわたしの分のココアを作って席についた。

「熱いから気をつけろよ」

「分かってるよ。子どもじゃないんだから」

「はいはい」

素直にありがとうも言えない。
子どもよりダメ過ぎる。

一人自己嫌悪に陥っていると、璃央が「はい」と目玉焼きをわたしのお皿に置いた。
それが合図かのように、わたしはサラダに入っていたトマトを璃央のお皿に移す。

目玉焼きが嫌いな璃央と、目玉焼きが好きなわたし。
トマトが嫌いなわたしと、トマトが好きな璃央。

好き嫌いが逆のおかげで、食事においてはウィンウィンの関係だ。

わたしは目玉焼きにケチャップをくるくるとかけて、大口を開けてパクリ。
黄身がとろりととろけて、もう、しあわせの極み!

すると璃央がふふっと笑った。

「・・・なに?」って言いたいけど、口いっぱいすぎて声が出せない。
代わりに、ちょっとにらんで反抗する。

察しのいい璃央は「いつ見ても美味しそうに食べるな」と思ってと微笑む。

「だって、美味しいもん。
こんな美味しいものが苦手だなんて璃央は人生半分損してるね」

ようやく口を動かせるようになって、
ここぞとばかりにちょっとしたイヤミを返す。

「かもな。でも、優愛にとってはラッキーだろ?」

「まぁね。璃央、醤油取って」

「はいはい」

璃央にもらった方は醤油かけて食べよ~。

今度は、醤油をちょんと垂らして、パクリ。
ちょっと大人な味。これもまた最高。

璃央にはまた笑われたけど、美味しいんだからしょうがない。

きっとこうやってなんでもすぐ顔に出ちゃうところが
子どもっぽいって思われてるんだろうな。