ピピピッと音がして体温計を確認すると、
画面には38.2℃と表示されている。
「だる・・・」
バイト休むって連絡しないと。
この日は朝から気分が優れなかった。
体のだるさ、それとーー。
今日だよな、優愛のデート。
優愛がどこの馬の骨かも分からない男と会っている。
そのことが、さらに俺の気分を最悪にさせた。
今まで優愛が自分に向けてくれていた笑顔も、言葉も、思いも、
これからはその男のものになることを考えると、ひどく不快だった。
俺にそんなこと思う資格なんかないのに。
「寝よ」
バイト先に連絡して、俺は眠りについた。
どれぐらい眠ったんだろうか、目を覚ますと、
寝る前は晴れていた空は、どんよりと雲に覆われていた。
何時?
時間を確認しようとスマホをつけると、
涼子さんからLINEが来ていた。
“今日、〇△に田嶋さん来てる?”
“多分違うと思うけど、一緒にいた男、うちの大学で悪い噂絶えない奴だったから”
“一応、伝えとく”
気づけば家を飛び出していた。
俺のせいだ。
もっとちゃんと止めてれば。
ちゃんと優愛と向き合ってれば。
そしたら、そんな男と優愛が会うこともなかったのに。
浮かんでくる後悔と、最悪な想像。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
体が熱い。息が苦しい。
それでも、足を動かした。
「やだ、離して!」
不意に聞こえた声の方を見る。
3人の男に囲まれながら必死に抵抗する女の子。
「優愛!」
「なんで・・・」
こちらを向いた大きな瞳には涙が溜まっている。
それを見た瞬間、何かが切れた音がした。
何も考えず、機械のように俺は拳を振り下ろした。
相手が倒れても、自分が殴られても構わず、俺は男たちを殴り続けた。
「璃央、もうやめて!」
俺の腕にすがりつきながら、優愛が切実に叫んだ。
その目は恐怖と不安に揺れていて、そのおかげでようやく冷静になった。
俺が男の胸倉をつかんでいた手を離すと、
そいつは怯えるように走り去っていった。
俺を見つめる大きな瞳から涙がポロポロと頬を伝って流れ落ちる。
傷の痛みなんかより、その姿に胸が痛んだ。
「怖い思いさせてごめん」
自分から突き放したのに嫌われるのが怖くて男と会うのを止めきれなかった。
そのうえ、怒りで我を忘れて怯えさせた。
最低だ。
それなのに俺の腕の中で優愛は、泣きながら「ごめんなさい」と口にする。
優愛が謝ることなんかないのに。
「俺は大丈夫だから。優愛は何もされてない?」
「うん・・・」
「よかった」
よかった、ほんとに。
安心した瞬間、視界が暗くなり体の力が抜けてしまった。
「璃央?!」
心配そうに叫ぶ優愛の声が聞こえる。
安心させたくて「大丈夫」と言ってみるけれど、体に力が入らない。意識が朦朧とする中、優愛に支えられながらなんとか家についた俺は、
優愛の肩から滑り落ちるように布団に腰をおろした。
「やっぱり病院行こうよ、璃央」
「寝てたら治るから大丈夫。送らせて悪い。
もう、大丈夫だから優愛は帰りな」
「大丈夫なわけないでしょ?!
わたし、薬とか色々買ってくるから璃央は寝てて」
そう言って優愛は、強引に俺を横にして上から布団をかけた。
移したくないし、ここには優愛に居てほしくないのに、
もう色々と限界で俺は大人しく眠りについた。
画面には38.2℃と表示されている。
「だる・・・」
バイト休むって連絡しないと。
この日は朝から気分が優れなかった。
体のだるさ、それとーー。
今日だよな、優愛のデート。
優愛がどこの馬の骨かも分からない男と会っている。
そのことが、さらに俺の気分を最悪にさせた。
今まで優愛が自分に向けてくれていた笑顔も、言葉も、思いも、
これからはその男のものになることを考えると、ひどく不快だった。
俺にそんなこと思う資格なんかないのに。
「寝よ」
バイト先に連絡して、俺は眠りについた。
どれぐらい眠ったんだろうか、目を覚ますと、
寝る前は晴れていた空は、どんよりと雲に覆われていた。
何時?
時間を確認しようとスマホをつけると、
涼子さんからLINEが来ていた。
“今日、〇△に田嶋さん来てる?”
“多分違うと思うけど、一緒にいた男、うちの大学で悪い噂絶えない奴だったから”
“一応、伝えとく”
気づけば家を飛び出していた。
俺のせいだ。
もっとちゃんと止めてれば。
ちゃんと優愛と向き合ってれば。
そしたら、そんな男と優愛が会うこともなかったのに。
浮かんでくる後悔と、最悪な想像。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
体が熱い。息が苦しい。
それでも、足を動かした。
「やだ、離して!」
不意に聞こえた声の方を見る。
3人の男に囲まれながら必死に抵抗する女の子。
「優愛!」
「なんで・・・」
こちらを向いた大きな瞳には涙が溜まっている。
それを見た瞬間、何かが切れた音がした。
何も考えず、機械のように俺は拳を振り下ろした。
相手が倒れても、自分が殴られても構わず、俺は男たちを殴り続けた。
「璃央、もうやめて!」
俺の腕にすがりつきながら、優愛が切実に叫んだ。
その目は恐怖と不安に揺れていて、そのおかげでようやく冷静になった。
俺が男の胸倉をつかんでいた手を離すと、
そいつは怯えるように走り去っていった。
俺を見つめる大きな瞳から涙がポロポロと頬を伝って流れ落ちる。
傷の痛みなんかより、その姿に胸が痛んだ。
「怖い思いさせてごめん」
自分から突き放したのに嫌われるのが怖くて男と会うのを止めきれなかった。
そのうえ、怒りで我を忘れて怯えさせた。
最低だ。
それなのに俺の腕の中で優愛は、泣きながら「ごめんなさい」と口にする。
優愛が謝ることなんかないのに。
「俺は大丈夫だから。優愛は何もされてない?」
「うん・・・」
「よかった」
よかった、ほんとに。
安心した瞬間、視界が暗くなり体の力が抜けてしまった。
「璃央?!」
心配そうに叫ぶ優愛の声が聞こえる。
安心させたくて「大丈夫」と言ってみるけれど、体に力が入らない。意識が朦朧とする中、優愛に支えられながらなんとか家についた俺は、
優愛の肩から滑り落ちるように布団に腰をおろした。
「やっぱり病院行こうよ、璃央」
「寝てたら治るから大丈夫。送らせて悪い。
もう、大丈夫だから優愛は帰りな」
「大丈夫なわけないでしょ?!
わたし、薬とか色々買ってくるから璃央は寝てて」
そう言って優愛は、強引に俺を横にして上から布団をかけた。
移したくないし、ここには優愛に居てほしくないのに、
もう色々と限界で俺は大人しく眠りについた。

