「「今度の土曜日、デートすることになった?!」」

ファミレスでのわたしの突然の報告に、声を揃える真弓と曽田くん。

「誰と?」

「えーっと、この人」

わたしはSNSの画面を開いて2人に見せた。

「いや、だから誰?」

「K大の浩輝さん。
スイーツ関連の投稿、色々してて、
いいねしたり、コメントしたりしてたら返信きてさ。
DMでやりとりしてるうちに今度一緒にカフェ行かないって誘われちゃった・・・って何?その顔」

若干、引き気味の真弓と曽田くん。

「だって優愛、SNSで出会いとか求めるタイプじゃなかったじゃん」

「それはそうだけど。この前、偶然塾一緒だった子と会って、
SNSで出会う方法教えてもらったんだよね」

璃央に勉強を教えてもらったあの夜から、1週間たった頃。
同じ塾に通っていた友達とばったり会った。
色んな話をするうちに恋人の話になって、SNSで出会ったことを聞き、
気を紛らわせたかったわたしは言われたとおりにやってみたのだ。

「でも、危なくない?
僕が言うのもなんだけど、ネットと現実で違う人も結構いると思うし」

確かに、曽田くんもネットだと完全に女の子だもんな。

「大丈夫だって。その子も今の彼氏とSNSで出会ったって言ってたし」

それに、今は早く新しい恋をしたい。
璃央のことを忘れてしまえるくらいの恋を。

そんなことを考えていると、わたしの手から誰かがスマホを抜き取った。

「え、ちょっ・・・」

「お疲れ様です。久松先輩」

「お疲れ~」

「なんで、璃央が・・・」

「僕がお呼びしました。
最近、田嶋さん忙しくてランチ会も来れなくて
久松先輩と会えてなかったから」

そうやって少し照れる曽田くん。

曽田くんや真弓には気を遣わせると思って璃央とのことは何も言ってない。

ランチ会も適当な理由をつけて断っていたけど、
まさか曽田くんがこんな気を回すなんて。

璃央は何事もなかったかのように、わたしの前に座り
スマホの画面の男性について聞いてきた。

答えたくなくて黙っていると、代わりに真弓が答えた。

「SNSで出会ったんですって。それで、今度デートらしいですよ」

「ちょっと、真弓っ」

「やめとけ。こんなの絶対ろくでもないって」

は? いきなり何を言い出すの。

「璃央に浩輝さんの何が分かんの?」

「分かるよ。
ただのスイーツ好きのアカウントならスイーツだけ載せとけばいいのに、
わざわざ自分の写真も載せてアピールしてる時点で怪しい。
こんなの絶対ヤリモクだから」

「最低! ごめん2人とも。わたし、帰る」

璃央からスマホを取り返してカバンを持って出て行こうとしたところ
璃央がわたしの腕を掴んだ。

「優愛、マジでやめとけ。
優愛ならもっとまともな恋愛できるって」

ほんとに、なんなの?
なんで璃央がそんなこと言えるの?

「まともな恋愛って何?
ていうか、璃央がまともな恋愛とか語れんの?
お願いだから、もうほっといてよ!」

自分の尖った声が響く。
真弓と曽田くんが驚いた顔をしている。
やってしまったと思ったけれど、謝る余裕なんてなかった。

「分かったから。悪かったよ、色々言って。
でも、2人きりになったりはするなよ。
あと、何かあったらすぐ連絡して」

心配してくれてるのは分かってる。
だけど、その優しさが今は苦しい。

わたしは、何も言わずその場を後にした。