そうこうしているうちに家に到着。

そのままバイバイだと思っていたのにーー。

「危ないから、匡人帰ってくるまで邪魔するわ」

「えっ?! いや、この時間に2人きりってのはマズいんじゃないかな」

「なに今更? 今までだってあったじゃんそんなこと」

「それはそうだけど・・・」

「お邪魔しま~す」

「ちょっと!」

わたしの制止も聞かず、璃央は靴を脱いで家に入っていく。
そして我が家のようにリビングのソファに腰かけた。

「わたし課題あるから、好きにしてて」

せめて違う空間に。
そう思って自分の部屋にこもるはずだったのにーー。

「で、どの問題が分かんないの?」

「・・・全部」

「マジか。じゃあ、まずこの問題は・・・」

どうやら璃央は真弓からわたしの特別課題の話を聞いていたらしく、
もし時間あったら教えてあげてと頼まれていたらしい。

今日に関してはありがた迷惑だよ真弓。

「優愛、聞いてる?」

「あっ、ごめん」

正直、勉強どころじゃないけれど、
実際一人で解くのは厳しかったし頑張って集中しよ。

「じゃあ、もう1回言うな。
この問題はxが3のときに代入して、こうだから、a=2、b=1。分かる?」

「・・・えっ、早すぎて意味わかんない。
問題解いたっていうか気づいたら答え出てたんだけど」

「・・・感覚?」

あぁ、だからか。

「璃央って勉強教えるの苦手?」

「うっ、うるさいな」

そう言って少し不貞腐れながらも、璃央はスマホを取り出して、教え方を検索をし始めた。

人に勉強を教えたがらないのは、感覚で解けちゃうせいで人に説明するのが苦手だからか。
ルックス良くて、運動も勉強もなんでもできる璃央の苦手なことを知れただけで、なんだか少し嬉しい。

それに、苦手なのに一生懸命分かりやすく教えようとしてくれる今の璃央はなんだか真剣で、ちょっとだけ必死で。
それが妙に新鮮で、思わずふふっと笑ってしまった。

「なんだよ?」

「別に〜。なんか、かわいいなって思っただけ」

「はあ!? お前がバカだから教えてんだけど!!」

顔をちょっと赤くしてムスッとする璃央が、なんだかさらにかわいい。

いつもなら言い返すところだけど、今はなんだかそのバカも嫌じゃない。

「ごめん、ごめん。ちゃんと聞くから、教えて?」

笑いながらそう言うと、璃央はまだ不機嫌そうに鼻を鳴らして、ノートにペンを走らせた。