「えっ?」
無言で、次から次へとトマトを食べていく優愛。
戸惑う俺の目の前で、あっという間に器は空になった。
「璃央!」
「は、はい・・・?」
優愛がトマト食べるところ初めて見たと感心していると
突然の呼びかけに、思わずびくっとする。
「わたし、これからはトマト自分で食べるし璃央の分も頑張って食べる!」
「えっ?」
「あと目玉焼きは2回に1回・・・やっぱり、3回に1回は璃央にわたしのもあげるから!」
息を弾ませながら勢いよく言い切った優愛。
その真っ直ぐな目は、ふざけてるわけじゃないってことを物語っている。
「・・・・・・っははっ!」
優愛には申し訳ないけどつい吹き出してしまった。
だってあまりにも真剣すぎて、逆に可愛くておかしくて。
「はははっ!真剣な顔して何言いだすのかと思ったら、ふふっ。
匡人、お前の妹かわいすぎるんだけど」
「だよな~。こういうちょっとズレてるとこがまた可愛いんよ」
そう言いながら優愛の頭を撫でる匡人は、相変わらずのシスコンだ。
「もう!2人ともバカにして!
もういい。言いたいことは言ったからお風呂入ってくる!」
怒った顔でぷんすかしながら、そのままリビングを出ていく優愛。
「ああやって怒ってるのもかわいいんだよな~」
「だな」
その姿さえ愛らしくてまた笑みがこぼれてくる。
すると匡人が、ふいに静かに言った。
「あんなに可愛いんだから、あっという間に優愛取られちゃうよ?
いいの?」
急な匡人の言葉にドクンと心臓が嫌な音を鳴らす。
「いいも何も俺、優愛に嫌われてるし」
「そう璃央が仕向けてんじゃん」
優愛と違って匡人は勘がいい。
嘘をついても、必ず匡人には見抜かれてきた。
それで何度も救われたけど、今ばかりは――その洞察力が少し憎い。
「だってお前だって嫌だろ。俺みたいなのが優愛とどうこうなるの」
声に出して言ってみて、あらためて自分がどれだけ自信がないのか思い知る。
不特定多数の女と関係持って、家庭環境にも問題がある奴。
自分が兄だったら絶対、反対する。
「まぁ確かに、色んな女の子と関係持ってるのはいただけないけどさ。
でもそれも、優愛に嫌われるためとか、優愛に手出さないためとかそんな理由でしょ?
なら、優愛と付き合ったらそれもなくなるし、俺的にはなんの問題もないけど」
ふふっと向けられる笑顔が鬱陶しい。
「現時点で問題ある時点で問題あるだろ。
もっとちゃんと優愛の幸せ願ってやれよ」
「ちゃんと願ってるよ。
でも俺はさ、大事な妹だけじゃなくて大事な親友にも幸せになってほしいわけよ」
匡人の声は穏やかだったけど、しっかり芯がある。
本気で、俺と優愛のことを考えてくれてる――それが、ひしひしと伝わってくる。
まったく、こいつは。
「もう俺、匡人と結婚しよかな」
「え~、それは無理」
「無理とか言うなよ。傷つくだろ」
「じゃあ丁重にお断りさせていただきます」
「丁寧になっただけで同じだろうが」
ははっと笑う匡人につられて、俺も笑ってしまう。
匡人は昔からこうだ。
俺の嘘を見抜いても、責めたり突き放したりはしない。
ただ、自然とこっちの気持ちがほぐれてしまうような言葉をくれる。
引っ込み思案で友達がいなかった俺に話しかけて、
誰とも繋がれなかった俺を、友達にしてくれた。
――俺の、大事な、初めての親友。
でも、だからこそ・・・この家族にふさわしいのは俺じゃない。
無言で、次から次へとトマトを食べていく優愛。
戸惑う俺の目の前で、あっという間に器は空になった。
「璃央!」
「は、はい・・・?」
優愛がトマト食べるところ初めて見たと感心していると
突然の呼びかけに、思わずびくっとする。
「わたし、これからはトマト自分で食べるし璃央の分も頑張って食べる!」
「えっ?」
「あと目玉焼きは2回に1回・・・やっぱり、3回に1回は璃央にわたしのもあげるから!」
息を弾ませながら勢いよく言い切った優愛。
その真っ直ぐな目は、ふざけてるわけじゃないってことを物語っている。
「・・・・・・っははっ!」
優愛には申し訳ないけどつい吹き出してしまった。
だってあまりにも真剣すぎて、逆に可愛くておかしくて。
「はははっ!真剣な顔して何言いだすのかと思ったら、ふふっ。
匡人、お前の妹かわいすぎるんだけど」
「だよな~。こういうちょっとズレてるとこがまた可愛いんよ」
そう言いながら優愛の頭を撫でる匡人は、相変わらずのシスコンだ。
「もう!2人ともバカにして!
もういい。言いたいことは言ったからお風呂入ってくる!」
怒った顔でぷんすかしながら、そのままリビングを出ていく優愛。
「ああやって怒ってるのもかわいいんだよな~」
「だな」
その姿さえ愛らしくてまた笑みがこぼれてくる。
すると匡人が、ふいに静かに言った。
「あんなに可愛いんだから、あっという間に優愛取られちゃうよ?
いいの?」
急な匡人の言葉にドクンと心臓が嫌な音を鳴らす。
「いいも何も俺、優愛に嫌われてるし」
「そう璃央が仕向けてんじゃん」
優愛と違って匡人は勘がいい。
嘘をついても、必ず匡人には見抜かれてきた。
それで何度も救われたけど、今ばかりは――その洞察力が少し憎い。
「だってお前だって嫌だろ。俺みたいなのが優愛とどうこうなるの」
声に出して言ってみて、あらためて自分がどれだけ自信がないのか思い知る。
不特定多数の女と関係持って、家庭環境にも問題がある奴。
自分が兄だったら絶対、反対する。
「まぁ確かに、色んな女の子と関係持ってるのはいただけないけどさ。
でもそれも、優愛に嫌われるためとか、優愛に手出さないためとかそんな理由でしょ?
なら、優愛と付き合ったらそれもなくなるし、俺的にはなんの問題もないけど」
ふふっと向けられる笑顔が鬱陶しい。
「現時点で問題ある時点で問題あるだろ。
もっとちゃんと優愛の幸せ願ってやれよ」
「ちゃんと願ってるよ。
でも俺はさ、大事な妹だけじゃなくて大事な親友にも幸せになってほしいわけよ」
匡人の声は穏やかだったけど、しっかり芯がある。
本気で、俺と優愛のことを考えてくれてる――それが、ひしひしと伝わってくる。
まったく、こいつは。
「もう俺、匡人と結婚しよかな」
「え~、それは無理」
「無理とか言うなよ。傷つくだろ」
「じゃあ丁重にお断りさせていただきます」
「丁寧になっただけで同じだろうが」
ははっと笑う匡人につられて、俺も笑ってしまう。
匡人は昔からこうだ。
俺の嘘を見抜いても、責めたり突き放したりはしない。
ただ、自然とこっちの気持ちがほぐれてしまうような言葉をくれる。
引っ込み思案で友達がいなかった俺に話しかけて、
誰とも繋がれなかった俺を、友達にしてくれた。
――俺の、大事な、初めての親友。
でも、だからこそ・・・この家族にふさわしいのは俺じゃない。

