空き教室で璃央を待っている間、その場から居なくなろうとする曽田くんと、
そんな曽田くんを必死に引き止めるわたしの攻防戦が続いていた。
「やっぱり、僕、帰ります!」
「ダメだって!ちゃんと自分で渡さないと!」
小柄で昔はどうだったか知らないけれど今は線も細く見えるのに、
やっぱり男の子だからか全体重を乗せて腕にしがみついても止めきれず、
曽田くんはだんだんとドアに近づいていく。
もう、止めきれない・・・。
そう思った時、ガラガラとドアが開いた。
「璃央!」
わたしは、曽田くんの腕にしがみついたまま璃央の方を見上げた。
ナイスタイミング!と笑顔のわたしとは反対に、
しばらくぶりに間近で見る璃央にどうしていいか分からずあわあわしている曽田くん。
璃央には呼び出し理由を言ってないので、璃央からしたら今の状況はよく分からないだろう。
「実は璃央に話があって・・・」
簡単に呼び出した理由を説明しようとすると、
こちらに近づいてきた璃央によって、
わたしは曽田くんから引き離され、
気づけば璃央の真正面に立たされていた。
「なに? 話って?」
笑ってるのになぜか圧を感じるのは気のせいだろうか。
「あっ、わたしじゃなくて話があるのは同じクラスの曽田くんで」
ほらっ!と自分の代わりに曽田くんを璃央の前に立たせる。
「曽田くん?」
「あ、あの、僕。その・・・」
頑張れ曽田くん!
「あの、えっと・・・」
心の中の応援も届かず、
「あの」と「その」だけを繰り返す曽田くんを見かねて
わたしが助け舟をだそうとした時ーー。
「もしかして望?」
「えっ?」
璃央の思いがけない言葉に、さっきまでうつむいていた曽田くんが顔を上げる。
「・・・あっ、やっぱそうだ。久しぶり。
なに、お前、うちの高校に入ったの?」
まるで昔の友達にでも再会したかのように、璃央は気さくに声をかけた。
何年も前に、ほんの数回会っただけの相手なのに。
きっとその時とは外見も全然違っているはずなのに――。
それでも璃央は、彼をちゃんと覚えていて、
今の彼にも気づいて声をかけた。
それだけのことなのに、
その優しさに触れたわたしの胸にも、ふわりと温かいものが広がった。
思わず目頭が熱くなる。
きっと、曽田くん本人はその何倍も嬉しかったに違いない。
「はい! あっ、あの、僕……」
案の定、曽田くんは涙をこらえきれず、ぽろぽろと泣き出してしまった。
言葉に詰まりながら、それでも必死に璃央への感謝を伝えようとしている。
璃央はそんな曽田くんの涙に少し驚いたような顔をしながらも、
まっすぐに彼の言葉に耳を傾けていた。
そりゃ、モテるよね。
その外見だけでも一目惚れする女子が後を絶たないのに、
こんなふうに自然に人に寄り添うことができるなんて、
もう好きにならない方が難しい。
女遊びなんかしてるくせに、
同性から嫌われるどころか、逆に好かれてる理由も
こういうところなんだろうなって、妙に納得してしまった。
そんな曽田くんを必死に引き止めるわたしの攻防戦が続いていた。
「やっぱり、僕、帰ります!」
「ダメだって!ちゃんと自分で渡さないと!」
小柄で昔はどうだったか知らないけれど今は線も細く見えるのに、
やっぱり男の子だからか全体重を乗せて腕にしがみついても止めきれず、
曽田くんはだんだんとドアに近づいていく。
もう、止めきれない・・・。
そう思った時、ガラガラとドアが開いた。
「璃央!」
わたしは、曽田くんの腕にしがみついたまま璃央の方を見上げた。
ナイスタイミング!と笑顔のわたしとは反対に、
しばらくぶりに間近で見る璃央にどうしていいか分からずあわあわしている曽田くん。
璃央には呼び出し理由を言ってないので、璃央からしたら今の状況はよく分からないだろう。
「実は璃央に話があって・・・」
簡単に呼び出した理由を説明しようとすると、
こちらに近づいてきた璃央によって、
わたしは曽田くんから引き離され、
気づけば璃央の真正面に立たされていた。
「なに? 話って?」
笑ってるのになぜか圧を感じるのは気のせいだろうか。
「あっ、わたしじゃなくて話があるのは同じクラスの曽田くんで」
ほらっ!と自分の代わりに曽田くんを璃央の前に立たせる。
「曽田くん?」
「あ、あの、僕。その・・・」
頑張れ曽田くん!
「あの、えっと・・・」
心の中の応援も届かず、
「あの」と「その」だけを繰り返す曽田くんを見かねて
わたしが助け舟をだそうとした時ーー。
「もしかして望?」
「えっ?」
璃央の思いがけない言葉に、さっきまでうつむいていた曽田くんが顔を上げる。
「・・・あっ、やっぱそうだ。久しぶり。
なに、お前、うちの高校に入ったの?」
まるで昔の友達にでも再会したかのように、璃央は気さくに声をかけた。
何年も前に、ほんの数回会っただけの相手なのに。
きっとその時とは外見も全然違っているはずなのに――。
それでも璃央は、彼をちゃんと覚えていて、
今の彼にも気づいて声をかけた。
それだけのことなのに、
その優しさに触れたわたしの胸にも、ふわりと温かいものが広がった。
思わず目頭が熱くなる。
きっと、曽田くん本人はその何倍も嬉しかったに違いない。
「はい! あっ、あの、僕……」
案の定、曽田くんは涙をこらえきれず、ぽろぽろと泣き出してしまった。
言葉に詰まりながら、それでも必死に璃央への感謝を伝えようとしている。
璃央はそんな曽田くんの涙に少し驚いたような顔をしながらも、
まっすぐに彼の言葉に耳を傾けていた。
そりゃ、モテるよね。
その外見だけでも一目惚れする女子が後を絶たないのに、
こんなふうに自然に人に寄り添うことができるなんて、
もう好きにならない方が難しい。
女遊びなんかしてるくせに、
同性から嫌われるどころか、逆に好かれてる理由も
こういうところなんだろうなって、妙に納得してしまった。

